Introduction
第十六話 落日
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復作業程度なら、僕が学園の整備室で行うことができたし、必要な部品があれば連絡をすれば送ってくれていた。とはいえ、今回はそうもいかなかった。
正直、僕はできればここには来たくなかった。この場所はあまりにも居心地が悪い。
月読のメンテナンスに関わる人間はそう多くはない。なぜなら、必然的に僕の秘密にも触れてしまうから西園寺家で厳選した人間しかいない。逆を言えば、彼らはみな僕のことを知っている。そして、それは今まで僕を腫物のように扱ってきた人たちな訳で、それは今も変わっていない。
それどころか、男性操縦者ということでまるで実験動物でも見るかのようだ。実際、入学前には幾度もそういった目にあってきた。当然、紫音として入学することが決まっていた以上は痕や後遺症が残るようなものは無かったのだけど。
世界で唯一のサンプルが、自分達のみが手の届くところにいる。それは彼らの優越感と知的好奇心を満たすに十分だったようだ。
そして、例によって今回もいろいろと体を調べられることになった。名目上は月読の操縦に伴う体の負担のデータを取る、と言っていたけどどこまで本当か。
先日の楯無さんの言葉が思い出される。僕の体調が悪化することがあるのはIS使用によるものなのか、月読が原因なのか。どちらにしろ月読以外が動かせない僕にはどちらが原因かを判断することはできないし、どちらも見当違いなのかもしれない。
しかし、伝えられた結果は特に異常なし。信じていいのかは甚だ疑問ではあるけど、ひとまずは安心することにした。もちろん、ここは病院ではないので何かしらの病気の可能性は残るのだけど、月読との関連性はなしとSTCが判断したということだ。
一方で、月読の修復状態は芳しくないものだった。本体の修復を優先したため、ネームレスは未だ破損したまま。肝心の本体も、修復率は40%ほどで止まっている。話を聞く限りだとここからの修復がいろいろと困難らしい。やっぱり束さんの協力を仰ぐ必要があるかもしれない。もちろん、ここの人たちが大人しく協力してくれるとは思えないから何かしら理由をつけて持ち出す必要があるけど……。
予想通り、一度月読を持ち出したい旨を伝えたら難色を示された。でも、とりあえず装着ができる程度には直っていること。僕が月読以外を装着できないことで一部の授業に参加できず、今は理由を作って誤魔化しているがこれ以上は怪しまれる可能性があることを伝えて、とりあえず数日だけ持ち出しの許可を貰った。
ホッとしつつも表情に出さないように努め、月読を預かる。待機形態である月読がもとの位置に収まると、より大きな安堵感に包まれる。わずか数ヶ月で随分ISに依存するようになってしまった、と内心苦笑しつつ今の僕があるのはISを通して関わった人たちがいるからだと考えるとそれも当然か、
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