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俺はここにいる!
第八話「△デート・鏡花後編」
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「はい、畏まりました。『恋の女神からの贈り物』ですね。すぐにお持ちいたします」


『黒い妖精からの贈り物』よりはマシなものが出てきそうだが、いったいどんな飲み物なんだか。


 待つこと三十秒。


「お待たせいたしました。恋の女神からの贈り物です」


 相変わらずの仕事の早さだ。


 少々大きめのグラスの中にはオレンジジュースが注いである。そして、なぜかストローが二本……。


 いや、いわずもがな。このくらい察すことができない俺ではない。


「これ、カップルの間で人気の品なのよ。一緒に飲むと、飲んだ人と必ず結ばれるって」


 はい、ベタなキャッチコピーいただきました! そして、嬉しそうにジュースを勧めるそんな貴女が大好きですッ!


 典型的な恋人たちのやり取りが好きな鏡花にとって、この『一つのジュースを一緒に飲む』というシチュエーションはまさにドストライクなのだろう。お目々を爛々と輝かせてストローを差し出してくる妻の姿に、情熱にも似た熱き猛々しい想いが込み上げてくる。


 今すぐ抱きしめて睦み合いたい欲求をぐっと押さえ込み、大きく息を吸う。


 この想いを解放するのはまだ早い。それに鏡花は望んでいないだろうし。


 なにかと男前な鏡花もこう見えて初心なところがあり、恋人同士がする睦事を他者に見られるのを良しとしない。


 身内同士ですら気恥ずかしさが上回るのだ。見ず知らずの他人に見られるとなると羞恥心のあまり手が出るのは目に見えている。主に俺が被害に遭うがな。


 ちなみに『腕を組む』や『はい、あーん』、『ジュースを一緒に飲む』、『膝枕で耳かき』などは健全であり許容範囲らしい。キスはセーフだが性的なものはアウトだそうだ。


 まあ、焦ることはない。デートの終盤は決まっているのだから、その時に猛った想いを存分にぶつければいいのだ。


「ほら、蒼も飲みなさいよ」


「あいよ」


 至近距離で見つめ合いながらストローを口に咥える。


 こうして改めて見ると、鏡花ってホント整った顔立ちしてるよなぁ。眉毛は細いし、目はパッチリしてるし、鼻はスッとしてるし。


 唇もぷにぷにしてるし、と感触を思い出していると、眼前からジトッとした目を向けられた。


「なにニヤニヤしてんのよ」


「ん〜、俺の嫁さんは改めて美人だなと思ってさ。いやー、俺は果報者だなぁって」


「い、いきなりなに言い出すのよ……」


 ぷいっと目を逸らした鏡花は顔を赤くしながら小さくつぶやいた。


「……蒼も、その……格好いい、わよ」


「……」


「……」


 あー、もう! 抱き
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