暁 〜小説投稿サイト〜
ネギまとガンツと俺
第20話「試練―其の@」
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 学生達に告白の名所として知られる世界樹広場の大階段で、2人の男女が向かい合っていた。男は普段から愛用している詰襟型の学ランを着用。対する女は中学生の制服で見に包んでいる。

 夕日が差し込み、彼等の赤い顔をさらに赤く塗りあげる。

 小さな風が吹く。

 背後にそびえる大きな樹が立派に茂らせた葉をさざめかせ、気持ちのよい自然の音色が彼らの緊張を高めていく。

 180cm以上の身長を誇るその女性徒は、階段を数段下がることによって自身よりも10cm以上低い少年の頭の位置を平等に保たせていた。

「「……」」 

 台詞もなしに徐々に近づくお互いの顔。彼と彼女に言葉は必要なく、ただ唇を求めようとしていた。

 少年が少女の肩に手をかけた。

 まるでそれを合図にしたかのように、少女は両手を自分の胸の前で組み合わせ、乙女らしく目を閉じる。

「……楓」

 呟いた名が風に乗り、空に舞う。大きく木々が揺らぎ、お互いの唇が触れ合おうとして――

「っ!?」 

 ――飛び上がるように布団から跳ね起きた。

 小動物のようにキョロキョロと周囲を見渡し、まだ窓から差し込む光が弱いことを確認。ベッドの上で、制服ではなくジャージを着ている自分。

 先ほどのシチュエーションとは全く違う状況にある。

「……」

 数秒ほど考え込み、そしてやっと気付いた。

「夢かい!!」

 タケルの一人突っ込みが虚しく部屋に響いた。


 

 時刻はまだ朝の4時半くらいだろうか。タケルはガンツスーツの上からスポーツウェアを着用して散歩していた。

 最近ではミッションがなかなかのペースで起こっているため、ガンツスーツは出来るだけ身から放さないようにしているのだ。

「……はぁ〜」

 重いため息が出るのは当然、今朝の夢の内容のせい。

 3日前の惚れ薬の事件から、どうにも楓のことが頭から離れない。フと息をつくたびに、彼女の笑顔が思い出されて、なにやら味わったことのない感覚に胸を締め付けられる。

「……駄目だな」

 振り払おうと自然に目を配る。

 無趣味なタケルにとって唯一の趣味と言っても、過言ではないかもしれない。適当な場所でそこにある自然を見つめては、何かを思うわけでもなく一人のほほんと佇む。

 ミッションのような殺し合いばかりをしてきた彼にとって、和むこともいつの間にか好きなことになっていたのだ。

 ――久しぶりだな。

 気持ちよくなり、目を閉じる。

 視覚が閉ざされたことにより、その他の感覚が研ぎ澄まされるのがわかる。朝の匂い、虫や鳥達の鳴き声、少し湿気っているが、それが逆に気持ちのいい空気……様々な心地よい自然が流れている。


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ