A's編
第三十一話 裏 中 (なのは)
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高町なのはにとって、それまでの日々をどのように表現したらいいのかわからなかった。
週に何度か彼の魔法の練習のために彼の自由な時間の大半を独占できる日々とわずかとはいえ毎日顔を合わせて、言葉を交わすことができる日々。いったいどっちが幸福なのだろうか。
例えるならば、それは週に何度か大きなシュークリームを食べるか、小口のシュークリームを毎日食べるかの違いのようなものだ。もちろん、毎日大きなシュークリームを食べられるのが最大の幸福なのだろうが、それは高望みが過ぎることをなのはは理解している。
ただわかっていることは、なのはにとってのたった一人の友人である彼―――蔵元翔太との時間は彼女にとってかけがえのないほどに大切な時間ということだ。
彼の笑う顔を見るたびに、彼から名前を呼んでもらうたびに、彼が心配そうに自分の顔を覗き込んでくれるたびに、なのはは胸が幸せでいっぱいになるのを感じる。あの、一人だった半年とちょっと前からは全く考えられないほどに幸福に満ちた時間だった。
だからこそ、その時間を大切にしたいと思うし、もっと味わいたいと思うし、失いたくないと思うのだ。
さて、そんななのはが多少思い悩む日々もようやく終わりが訪れようとしていた。つまり、闇の書の魔力が十二分に集まったということである。今日は、闇の書を封印するための儀式が海鳴市のどこかで行われるらしい。
らしい、というのはその場になのははついて行っていないからである。なのはとしては、翔太の安全を確保するためにもついていきたかったのだが、今回の作戦のリーダーであるクロノが却下したのだから仕方ない。
理由としては、なのはの高すぎる魔力があげられる。儀式魔法というのは、複雑で繊細なものだ。そんな儀式の場所に魔力ランクがSSSを越えることができるなのは―――通常でもSランク程度の魔力を持つ―――がいれば、魔力場が壊れて失敗してしまうかもしれない。そうなれば、今までの苦労が水の泡だ。だから、翔太の大丈夫だよ、という言葉を信じて待つ以外、なのはに選択肢はなかった。
もっとも、その場に行くことは無理でも、覗き込むことは十分に可能なのだが。
今、なのはは自分の部屋からレイジングハートを媒介として映し出されたウォッチャーからの映像を見ていた。
レイジングハートから映し出される映像はひどく単調だ。場所はどこかの廃ビルの屋上だろう。手入れされていない屋上とぼろぼろになったフェンスからそうやって判断する。なにより、いくら今日がクリスマス・イヴとはいえ、ビルにまったく明かりがついていないことがその事実を決定的にしていた。
廃ビルの屋上、その出入口付近で向かい合うクロノと翔太とはやて。翔太ははやての隣におり、向かい合ってるのは実質ク
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