A's編
第三十一話 裏 中 (なのは)
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た。
なのはは、自らの足にフィンを展開して空へと浮かぶ。
「あの子を止めてくるね」
「ちょっと待って! 僕も―――っ!」
守護騎士たちが戦っている場所へと向かおうとしているなのはに翔太が声をかける。だが、その言葉の途中でなのはは、彼の言葉を止めるように首を横に振った。
確かに翔太の『彼女を止める』という判断は正しいかもしれない。しかしながら、それが翔太にできるか? という問いには、なのはもレイジングハートも首を横に振る。ちょっと手を合わせただけでも彼女の危険性は理解できる。ただでさえ、翔太の魔力は守護騎士を下回っているのだ。到底、守護騎士四人を相手にしている彼女の相手ができるとはお世辞にも言えない。むしろ、翔太が傷つく危険性が高い。だから、この判断にはなのはは首を横に振らざるを得なかった。
「でも……」
しかし、翔太は納得がいかない様子だった。もしかしたら、なのはだけを戦場へと送ることに心が咎めているのかもしれない。翔太は優しいから、そういうところに気がいくのだろう。ならば、ならば、翔太の心が咎めないように、代わりの条件を出そう。戦場に行かなくても、翔太が傷つかなくてもいいような条件を。
「だったら、ショウくんが応援してよ。頑張れって。それだけで私はきっと強くなれるから」
そう、それだけでよかった。翔太が応援してくれることはなのはが正しいことを、いい子であることを証明してくれるから。なによりも、応援がなのはに向けられるということは、翔太がなのはを、なのはだけを見ている証だから。それだけで、翔太が見てくれている、それだけでなのはは万の大軍でも薙ぎ払って見せるだろう。
やがて、何かを考えていた翔太は、うん、と自分を納得させるようにうなずいて口を開く。
「なのはちゃん、頑張って!」
うん、と返事しながらなのはは頷くと、視線を翔太から暴走しながら守護騎士と戦っている闇の書へと目標を見据えるように変更する。
翔太からの応援をその身に受け、心の中を翔太が見てくれることへの歓喜でいっぱいにしながら、なのはは夜の海鳴の街の空を駆けるのだった。
つづく
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