A's編
第三十一話 裏 中 (なのは)
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どうしたらいいだろうか? と頭をひねらせたところで、脳裏に浮かぶとある光景。なかなか、いい考えではないだろうか、となのはは自画自賛した。
早速行動に移す。まずなのはも屋上の冷たいコンクリートの上に女座りで座る。本来であれば素足がコンクリートに当たって冷たくなるはずであるのだが、バリアジャケットで守られているため冷たくなることはなかった。そのまま、なのははゆっくりと慎重に翔太の頭を両手でつかむとクレーンゲームのように持ち上げていく。少しだけできた翔太の頭とコンクリートの間になのはの膝を入れ、そのまま再びゆっくりと翔太の頭を自分の太ももの上に置く。
膝枕と呼ばれる体勢が完成していた。休日などになのはの父と母がソファーの上でよくやっているのを見ていたなのはが思いついた行動だ。父である士郎は至福の時と言わんばかりに頬を緩ませ、母の桃子もなんとなく嬉しそうな表情をしており、周りは時間がゆっくりと流れているようだった。
それを見ていたなのはは、何がそんなに楽しいのだろうか? と疑問に思ったものだが、今ならよくわかる。
太ももから感じる翔太の体温と重みが何とも言えない幸福を与えてくれるのだ。触れている、触れ合えている。その事実だけでなのは自然と顔がゆるむほどの幸福を得ていた。今だけは、翔太をなのはだけが独占しているような気がして。なのはだけが翔太の今を知っているような気がして、それだけでなのはは幸せだし、気分は最高だった。
なのはの膝枕によって頭を少しだけ上げたことで姿勢が楽になったのだろうか。コンクリートの上で仰向けになって寝ているときも幾分、顔色がいいように思える。
身じろぎしない翔太。事情を知らなければ本当に寝ているようにしか見えない。
そんな安らかな寝顔を見て、太ももに彼の重みを感じているだけでも満足していたなのはだったが、もっと触れたいと欲が出てしまった。彼女が参考にした父と母のように自然と手が伸びた。
なのはの右手が触れたのは、彼の前髪だ。少しごわごわした感じの女の子や少女漫画に書かれるようなサラサラの髪の毛というわけではなかった。それでも、彼の前髪を梳くように右手を動かす。時折、くすぐったいのか、うぅ、と漏らすことがあったが、その度になのははびくっ! となってしまう。そして、また恐る恐る手を伸ばすのだ。
それがなんど繰り返されただろうか。どれだけの時間がたっただろうか。なのはとしては、このまま時間が止まってしまえばいいのに、とは思うものの、それは無理な話だった。
やがて、同じように繰り返しした先に、翔太が目覚める瞬間がやってきた。
髪を梳いている瞬間にううぅ、とうめき声をあげ、それに反応したなのはが手を離した後にゆっくりと翔太が目を開けようとしていた。何度かパチリ、
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