夕焼けは朱を深く刻む
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。それが郭図の気持ちの全てであった。
本来ならば、たかが少し関わりがあった程度の存在にここまで固執する張コウでは無かった。
袁家の優秀な駒として最上級の手腕を持つ張コウは、田豊に感化されて反骨心を持ってしまった。
初めに歪めてしまったのは自分達袁家だが、それでも異常なこと。
田豊には人を魅了する何かがあったのだ。他人に対して何も興味の無かった張コウを揺さぶる何かが。
郭図にはそれが何かは分からない。
「ならいい。それと……公孫賛への侵攻はいいけど、あまり外道な策は使うんじゃないよ」
「それぐらい分かってんよ。あのお綺麗は白馬姫は俺達の下で扱き使ってこそ価値があるしな。クソみたいな誇りを真正面から叩き潰して、屈辱の味を噛みしめさせた後に従わせてやんよ」
にやにやと下卑た笑みを浮かべ、次に攻める地の主をひれ伏せさせる事を思い描く郭図の姿に、明は凍てつくような眼差しを向けてただ沈黙を貫く。
自身の思考に潜っていたが、やがて満足したのか明に視線を向けた郭図は小さく鼻を鳴らして嘲笑った。
「そう睨むな。もう用事は済んだだろ? 筆頭軍師になった俺には、お前と違って仕事がたんまりあるんだ。それとも……可愛がって欲しいのかぁ?」
三日月型に口角を吊り上げて笑い、発された言葉に明は汚らわしいと言わんばかりに顔を顰めて、乱暴に扉を開け閉めしてから部屋を後にした。
それを見送り幾分、郭図は小さく笑った。
「バカが。お前らの言う事なんざ聞くかよ。代わりならいくらでもいる。どうしてわざわざ反抗しそうな奴を生かす必要があるんだよ。それに……正々堂々なんざ七面倒くせぇ事してられるか」
誰に聞こえずとも呟き、己が欲のみ頭にある男はさらに笑い続けた。
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