Introduction
第十五話 学園最凶
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うと剣を振りぬいたところで異変が起こる。
「なっ!」
紫苑のネームレスが砕け散ったのだ。
ネームレスは使用者のシールドエネルギーを使用して強度を保つ。故に、通常時は決して砕けない盾であり剣なのだが、エネルギーが尽きれば当然その恩恵はなくなる。例えエネルギーを使用しなくてもトップクラスの強度を持つのだが、同等の性能に加え使用者の力量で上回る相手の一撃に耐えられなかったのだ。
『うふふぅ、もぅあかんえ。終わりやぁ』
トドメを刺せることに浮かび上がる笑みを隠さない焔。村正も無傷ではないにしろ、ネームレスとは違い原型を残している。このままでは焔の勝利は明白だった。
ここで紫苑は残ったわずかばかりのエネルギーを使い、ブーストを行い焔に密着する。当然、この状態では本来は有効打がない。
『なんやぁ、悪あがきかぁ?』
「いいえ、これで……終わりです』
そっと右拳を焔の腹にあてる。そのまま、残ったエネルギーを全てブースターに注ぎ込み右拳一点に力を伝える。
『がっ……はぁ』
寸勁。
さまざまなエネルギーを一点に集中させることで、至近距離からでも爆発的な威力を作り出す中国武術に見られる攻撃方法。達人であればその拳は一撃必殺となり得る。
紫苑はもちろん、その極みには至っていないが、ISにおいては身体能力の向上とブーストというエネルギーを新たに加えることができる。故に、紫苑の一撃は必殺となり得た。焔の打鉄のエネルギーが残り僅かだったのもあるが、その衝撃は残りのエネルギーを奪い取り焔に届く。
『あん……いけず……やわぁ。ここにきてお預けなん……て』
そのまま力なく崩れ落ちる焔。意識はかろうじて残っているようだったが、自身の体を最早支えることはできないようだ。反射的に、紫苑は焔の体を支えるために抱きかかえた。と同時に試合終了のアナウンスが流れる。
『そこまで! 勝者、西園寺紫音!』
その声にようやく安堵した紫苑は、いまだ胸元で動けずにいる焔に目を向ける。まだ息は荒く心なしか顔が赤い。
「あ、あの。大丈夫でしょうか?」
思わず心配して声を掛けてしまう。紫苑は必死だったので忘れているが、最初に焔が放っていた殺気はいまは霧散している。
『う……うふふぅ。そないに優しくされたら……惚れてまうやん』
「……え?」
直後、試合開始時とは違う悪寒が紫苑の背中を駆け巡る。
何か得体の知れないものに狙われる……、まるで蛇に睨まれた蛙のような立場に紫苑は立たされた。……勝利したのは紫苑のはずなのに。
やがて担架を持った人が入ってきて焔を運び出す。ボロボロだった紫苑だが、なんとか歩いて戻ることができた。焔に関しては考えるのを止めた。……あまり深く考えたくなかっただけ
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