第五話
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そっ! 何が危機を回避する程度の能力だ! 自分しか守れないくせに何が能力だ!! こんな能力あったって! あったって!!)
『あったって使い物にならない。それはお前の思い込みじゃないか?』
「!?」
半分あきらめかけていた少年に、聞き覚えのある声が声をかける。いつも暗闇の中でしか声をかけなかった、あの男の声だった。
『自分がそう思い込んでいるだけじゃないのか?』
(そっそんなこと!)
『いいや違う。お前は心のどこかでそう感じてるはずだ。だが、あの死神はお前に言っただろ? まだ用なしになったわけではないと』
(それはそうだけど……)
『なら試せ! 集中しろ! このままで終わりたくないなら、本当に彼女達を助けたいなら!』
(……)
俊司だって、彼女達を助けたい。できれば誰も傷つけたくない。その考えが、無意識に彼の集中力を高めていった。
次第に、体が浮き上がりそうな感覚が全身をふんわり支える。体内から何か力のようなものがこみ上げ、彼の能力を引き立てていく。
「なっ……!?」
俊司は、目の前の景色が、徐々に変わっていくことに気付いた。
単刀直入に言えば、時間が止まっていく過程を見ているようだった。弾幕や影丸の小刀の動きは徐々に遅くなり、やがて止まっていく。
そして、霊夢と小刀の間には、光る点が浮かび上がっていた。
「こ……これって……」
俊司は走るのをやめ、呆気にとられていた。
(もしかして……俺の能力が……?)
男の声は聞こえない。俊司の能力を知っていたのか、あるいはたまたまだったのかはわからないが、きっかけを与えようとしていたのだろう。
(ほんと……何者なんだよ)
俊司は苦笑いをしながらあきれていた。
ゆっくりと歩きながら点に近寄っていく。そこには『ディフェンスポイント』という小さい文字が浮かび上がっていた。いつかみた、『アタックポイント』とまったく同じ形と光り方をしている。
それを見て、俊司は少し笑っていた。
(やっと……見つけた。俺の新しい役目……)
俊司はナイフを取り出すと、目の前にあった小刀にぶつける。
その後、金属音とともに、新しい歯車がゆっくりと回り始めた。
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