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IFのレギオス そのまたIF
糸括り 凪
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である以上頑張れば、は本当だがはそれだけでは無理でもある。だが良いのだ。要は興味さえ持たせられればいいのだ。細かい所は煙に巻いても良いのだ。嘘をついてるわけではないのだ問題はない。大人はこんなものである。
 言ったことをロクに疑わず信じてくれる。そういった点では楽だと、今さらに気づく。嘘は言わずいかに騙すかなのだ。そういった技術は大人であればあるほど無駄にある。

「ねーもじゃひげ、これのっていい?」

 レイフォンが鋼糸で出来たロードローラーを叩きながら言う。そして答えを聞くよりも早く跨る。
 サイズはレイフォンに合うように大体の目測で作ったが合っていた。車体に抱きつくように登り、またがったレイフォンの足先が地面よりも少し浮いていたが中々に丁度いい大きさだ。鋼糸は酷く鋭利なものだが隙間なく編みこまれたそれは肌を傷つける心配もない。
 またがってレイフォンはテンションが上がったのかバンバンバンバンと叩いたり、ハンドルを握ろうとして前につんのめったりする。

「これうごかないの?」

 体を前後させて揺するレイフォンだが、車体は動かない。もともと見えるガワだけを鋼糸で形成したものだ。内部機構や車輪との連結部など再現できているはずもない。
 だが、レイフォンにはそれが不満だったらしい。

「つまんない。ぼくのはうごくのに。もじゃひげのふりょ……そう、ふりょうひんっていうんだよ」
「まあ、偽物だからな。それはしかたな――」
「うまいっていったの、うそなんだ。もじゃひげへたくそなんでしょー。だからふりょうひんなんだ。へたくそー。へたっぴー。」

 馬鹿にするような、見下すレイフォンの視線が向けられる。腰を下ろしているからこそ、物理的にも見下される。
 
「おかあさんのともだちがいってたよ。えらそうなのにへたなひとって「むのー」っていうんでしょ」

 わかりやすい悪意ではなく、純粋な呆れだからこそ逆に感情を逆なでする。舌打ちしなかった己の自制心を褒めたかった。
 もし目の前にいるのが幼子でなかったなら鋼糸で掴み遠くへ放り投げていただろう。煙草を抑えるための手が口元を隠しているのが有難い。
 ここまで言われて黙っているのも癪に障るというものだ。

「ちょっと大人しくしてろ」

 頭の中に車輪の図面を思い浮かべる。タイヤ、シャフト、トルク、連結部。駆動する際の機構。難しく考えることはない。木製のおもちゃやゴムが動力のちゃちなキット程度の構造でいいのだ。思い浮かべ、車輪部分を構成していた糸を解く。
 レイフォンにも見えるように少しゆっくりと。見せつけるように糸を新たに組み上げていく。

「動かしてみろ」

 レイフォンが体を揺すると少しだがタイヤが動き、車体が前に進む。芝生は緩やかな斜面だ。ゆっくりとだがその
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