糸括り 凪
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。
少なくともそれは、地獄を望んでいた前よりは健全だと言える状況なのだから。
「もじゃひげあそぼー」
「母親から呼び方で何か言われなかったのかお前は」
「れいふぉんだよ。おかあさんから「おじさんはやめなさい」っていわれたんだ。だから、もじゃひげはおじさんじゃなくて、おじさんはもじゃひげで……もじゃひげはおじさんで……んみゅ?」
「大体わかったからいい。そうか、おじさんは駄目になったのか」
おじさんをやめろ、という事ではなく変な呼び方をするなという意味で言ったはずだったのだが無駄に終わったらしい。メイドの母親はもう一つの方の呼称を知らなかったのだろう。
今ここでその事を追求しても徒労に終わることはわかっている。後でメイファーに改めて言っておくべきだろう。
「好きに呼んでいいから頭を揺らすのをやめろ。この間の続きをするぞ」
「つづきってなに?」
「剄脈の同化だ。剄息の鍛錬はここ三日していたろうな」
前回、帰ってからもちゃんと剄を起こす呼吸をするようにレイフォンには言っておいた。剄脈を起こすには大体三日ほどかかるだろうと読んだので特に問題がなければある程度は普段から意識できる程度にはなっているはずだ。
だが、レイフォンは不思議そうな顔をする。
「けいそくってなに?」
「……おい待て、何もしてないのか。ちゃんと言ったはずだぞ」
「ぽかぽかするの、つまんないんだもん。や」
鏡を見ずとも眉間に深いシワが刻まれているのがわかる。
甘く見ていた。言われたことをちゃんとする。言えばちゃんとするだろう、などと余りにも楽観視が過ぎていたのを今さらに気づく。
この年頃の子供の意識を舐めていた。それが必要か否か、などではなく楽しいか楽しくないか。興味を惹かれるか惹かれないか。基準はそれだけなのだ。
前回言う事を聞いたのは母親からの言葉があったのと、目新しいことで興味が惹かれたから、なのだろう。
つまりこれからレイフォンに教えていくには興味を持つようにして教えていかねばならないのだ。
なるようになる、なんてわけがなかった。
そしてこれは恐らく、己の身にとって凄まじく難題といえるだろう。
「もじゃひげあそぼー」
レイフォンは手に持った小さな玩具を振りかざしていう。一つしかないそれでどう二人で遊ぶというのだろう。
荒野をかける際に使われるランドローラーと呼ばれる二輪駆動の乗り物をデフォルトした玩具だ。手で押し、それを芝生の上で動かしている。
「ぶーぶー。うぃーん。がー」
統一感のない擬音を発しながらレイフォンはそれを走らせる。
都市間交通には専用のバスがある。ランドローラーが用いられるのは緊急時、主に急速性が必要な場合。そして一番多いのは都市の外で汚染獣を迎
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