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虹との約束
第一部
第一章
衝突
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んでここにいるの?」
祐二は唐突に尋ねて、期待に応える答を待った。
「へ?」
「部活はどうしたの?」
「は?」
祐二の不安はどんどん色濃くなってなった。
「だから、部活。」
「今日は休みだよ。」
祐二は、唖然とした。すがるように、彩を尋問した。
「緊急じゃないの?」
「ありえないよ。」
「どうして?」
「今日、顧問は不在だもん。会議があるんだ。」
「そんな…」
祐二は彩の肩を揺すってでも、『ある』と言わせたかった。血の気が引くのがわかった。
「どうしたの。井原君。っていうか、どうして一人?」
彩は、何か含ませたような口調で尋ねた。どうやら、彩も知っているようだ。
 お終いだ。
 答えようとしても、口が動かない。喉が渇ききっていた。
「私、帰るよ。」
彩は不機嫌そうに去って行く。無理もない。いきなり尋問されて、突然固まられて。
 彩の後ろ姿が小さくなっても、祐二の心はただただ空漠としたままだった。真里と過ごした時間が、永遠に遠くなっていくような気がした。
 ああ、もっと周りに注意するべきだった。まだ、告白もしてないのに。
 祐二は激しい悔恨の情にかられた。梅雨時のじめじめした空気が、それをいっそう増幅させた。

 次の日、事件は起きた。
 掃除の時間だった。二人は同じ班だったこともあり、視線が合うたびにそらすようなことを繰り返した。夏の入り口で、ただでさえじりじりと蒸し暑いその教室では、一触即発の空気が漂っていた。
 祐二は、周りの目を気にしすぎてしまった。そしてついに、祐二を見ていた少年に、自分から声を掛けてしまった。しかもその少年は、長浦というやんちゃっ子だった。墓穴を掘ったに他ならなかった。
「なんだよ。」
本当に、短い言葉だった。しかしそれでも、疑惑と静寂に充ち満ちた教室の注目を集めるには十分すぎるほどだった。
「なあ、お前と原崎、付き合ってるんだって?」
ついに!と祐二は思った。想像以上に単刀直入な問いに、祐二は呆然とした。そしてまた彼は、その噂が、もう彼にはどうしようもない段階にまで達していることを悟った。
「付き合ってなんかいねえよ。」
慌てて彼を払いのけた。覚悟はしていたものの、やはり祐二には戦慄が走った。長浦の囁き声はクラスの者には聞こえないレベルだったけれど、クラスの視線から、彼らの情報と意図は統合され、共有されていることは一目瞭然だった。
「嘘言うなって。」
追うように長浦が言及した。背後でクスクスと笑う声がして振り返ると、そこには女ボスと裏で呼ばれている天野がいた。
「何だよ。」
祐二は思いきり睨み付けた。ここで負けたら、終わりだと思った。
「私見たもん。あの幽霊屋敷で二人が手を繋いでたの。」
彼女がそう言った途端、掃除担当の女子達がひゅうひゅうと声をあげた。
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