第十章 イーヴァルディの勇者
第六話 曝される正体
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らお前偉そうに先住魔法、先住魔法言ってるけど、わたしたちは『先住』なんて言い方はしないのね。精霊の力と言うのね」
「へいへい。んじゃ、その精霊の力とやらを見せてくれないかね?」
肩を竦める姿が幻視できそうなくらい適当にシルフィードをあしらうデルフリンガーの声に、シルフィードはフンッと一度大きく鼻息を吐くと、パクリと口を開いた。シルフィードの開けた口からは、ルーンではない口語の呪文が流れ出し始めた。
「我をまとう風よ。我の姿を変えよ」
唐突に部屋の空気がシルフィードを中心に渦を巻き始めた。風は段々と青く色付いていき、シルフィードの身体が完全にその青で覆われまるで繭のような状態になった瞬間、青い渦は光を放った。暗闇に目が慣れた士郎たちにはその光が強すぎ、一瞬視界がゼロになってしまったが、直ぐに視界は下に戻る。視界が回復した士郎の前には、先程までシルフィードが立っていた位置に、二十歳くらいの若い女性が立っていた。腰まで届く長い髪は、空から振り注ぐ月明かりに触れ蒼く輝いている。
部屋の中に、先程まで渦をまいていた風の名残が全て消えるまで、部屋の中は静まり返っていたが、直ぐにそれは破られることになった。それは、
「―――ッッ?! ぁぁぁああああああああああああっ!?」
床に膝をつき、罅の入った天井を仰ぐマリコルヌの絶叫によって。
「きききっ?! き、君はい、イルククゥさんじゃないかっ!? そんな、まさかシルフィードが化けた姿だったなんて―――ッ?!」
少年二人が驚愕のあまり目を見開き、身体を震わせながら動揺を露わにする中、
「っ、と、こりゃ驚いた。前々から竜にしては妙だと思ってたけど……まさか韻竜だったとはね……韻竜かぁ……売ったらどれくらいになるかねぇ?」
「……ロングビル。そういうことはもう少し小さな声で言ってちょうだい。でも確かに前から普通の竜とは感じが違う気がしてたけど……はぁ……あの子も大概規格外ね」
「韻竜……か……最近伝説と言うものに夢が見れなくなってきたわ……はぁ……これが大人になるってことかな?」
驚きを示しながらも女性陣は落ち着きを見せていた。
イルククゥ―――もといシルフィードを囲み各々驚きを示している中から一人シルフィードに向け歩みだした士郎は、近くに落ちていた比較的綺麗なままの布団のシーツを取り上げると、それをシルフィードに向かって放り投げた。
「人の姿になったら身体を隠しとけ。とりあえずそれで今は身体を隠せ」
「きゅいきゅい? ……服は何だかゴワゴワするから嫌なのよ」
「……俺の安全のためにも絶対に着てもらいたいんだが」
シルフィードが使った先住魔法は、都合よく服まで造りだすことは出来ないものであるため、今士郎たちの前に立つシルフィードは、
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