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剣の丘に花は咲く 
第十章 イーヴァルディの勇者
第六話 曝される正体
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は、既に元の形がわからない程にバラバラに砕け散り、その破片は奥の部屋に転がっていた。
 その余りの惨状に思わず足を止めたルイズたちを置いて、士郎は部屋の中に入る。
 部屋の窓は全て砕け散り、壁には一箇所大きな穴が空いており、そこから覗く空に輝く二つの月が部屋の中を照らし出していた。
 月明かりに照らされた部屋の中は、まるで部屋の中で竜巻が発生したかのような惨状を呈していた。部屋の中には、元が何であったのかさえわからない程に切り刻まれた破片が転がり、壁にはまるで何百人もの剣士が斬り合いをしたかのような傷跡が刻まれていた。
 士郎に続いて部屋の中に入ってきたルイズたちは、部屋の中を見渡し一瞬呆然とした後、各々バラバラに部屋の中を歩き出した。

「ここ、みたいね」

 そんな中、キュルケはある場所で立ち止まり、足元の床を指差した。

「どうした」

 近づいてくる士郎たちに向かってキュルケは顔を地面に向けたまま説明する。

「床のこの傷。この渦巻き状の傷から見て、タバサはここで竜巻型の魔法―――多分氷嵐(アイス・ストーム)でしょうけど、それを使ったようね。そして敵に向かって放った」

 キュルケの指先が、足元から壁際まで伸びる床に刻まれた渦巻き型の傷跡をなぞるように動く。

「いやぁ……ちょっと待ってくれないか、もしかしてこの部屋の惨状って」
「あら珍しい。いい勘してるじゃない。そうね多分あんたが考えてる通り、この部屋の惨状は氷嵐(アイス・ストーム)のみにより行われたのでしょうね」 

 破壊し尽くされた部屋を見渡しながら乾いた笑い混じりの声を上げるギーシュにキュルケは頷く。
 
「これだけの威力の魔法を使っても負けたなんて……あの子一体ナニと戦ったのかしら」
「そう……だな。なら、見ていたものに聞くしかないな」 
「見ていた?」

 顔を曇らせ溜め息混じりのキュルケの独白に、士郎は頷くと顔を横に向け穴が空いている壁を見た。ルイズが疑問の声を上げ士郎が顔を向けた方向を見る。つられて部屋にいる全員の顔も穴のあいた壁に向けられる。

「って、シルフィードじゃない」

 穴の向こうには、何時も間にか門の前で休んでいる筈のシルフィードの姿があった。キュルケの声に応えるように、シルフィードは「きゅい」と一声鳴くと、壁の穴から部屋の中に入ってきた。パキパキと床に転がる破片を踏み潰しながら歩いてきたシルフィードは、士郎たちの前で立ち止まる。

「ねぇシロウ。もしかして見ていたものって」
「ああ。シルフィードのことだ」

 シルフィードを見上げながら呆れた声で士郎に問いかけるルイズ。士郎はシルフィードを見ながら頷く。

「まあ、確かにそれが一番手っ取り早いかもね。ねぇ、シルフィード。タバサの相手ってど
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