第十章 イーヴァルディの勇者
第六話 曝される正体
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ていた。目を細め、漂う霧を貫きその奥を見据えながら士郎がポツリと呟く。
「……随分と暴れたようだな」
士郎の目には、霧と夜の闇に隠れる旧オルレアン公邸の姿がハッキリと映っていた。年月による劣化ではない最近出来たであろう傷がその目には映っていた。士郎はそれを確認すると、後ろを振り返り、息を荒げているシルフィードに近づいていく。
「ありがとうなシルフィード。お前のおかげで予定よりもずいぶん早く着けた。お前はここでゆっくり休んでいろ」
学院でモンモランシーに傷を癒してもらったとはいえ完治とは言えないためか、六人を乗せたとは言え、飛んだ距離は決して長距離ではないにも関わらず、シルフィードは息を荒く地面に横たわっていた。その首筋を撫でながら、士郎は優しくシルフィードに声を掛ける。シルフィードは士郎に首筋を撫でながら小さく「きゅい」と鳴くと、顎を地面に落とし、ゆっくりと目を閉じた。士郎はシルフィードのそんな姿を見て目を細める。
「ねえシロウ。どう思う?」
そんな士郎の横で旧オルレアン公邸を見上げていたキュルケが士郎に問いかけると、士郎はシルフィードを撫でながらチラリと旧オルレアン公邸を見る。
「敵はいないだろうな。注意するとしたら罠だが……可能性は低い。俺が先に入る。ルイズたちは俺の後を付いて来てくれ」
「ん、了解」
「気をつけてね」
士郎が闇に沈む旧オルレアン公邸に向かって歩き出す。その後ろをルイズ、キュルケ、ロングビルの順についていき、その最後にはギーシュとマリコルヌがぺったりとくっつきながら歩いていた。余りにも情けない姿である。
門を抜け、玄関へと続く馬車一台分の幅の道を士郎たちは歩く。道の左右にはあまり手を入れられていないのだろう鬱蒼と茂る木や草が生えている。それがまた、霧と月明かりに彩られる屋敷を恐ろしげに見せていた。
そんな中、士郎は昼日中を歩くようにすたすたと歩き、また、その直ぐ後ろを歩くルイズたちもすたすたとついて行き、ただ最後をついていくギーシュとマリコルヌだけが士郎たちに遅れる度に慌てて小走りに駆け寄っていた。……本当に情けない姿であった。
玄関には直ぐに着いた。玄関の前に立った士郎は、大きな館に見合うだけの大きな扉に手を伸ばすと、ゆっくりと開き始める。
風と揺れる枝葉の擦れる音だけが響く中、扉の軋む音が混じる。
扉が完全に開かれると、月明かりが届かず、明かり一つなく完全な闇に沈んだホールの姿が士郎の目に映る。
「行くぞ」
ホールの中を見回した士郎は、一言背にいるルイズたちに伝えるとホールに向かって一歩を踏み出した。
士郎の背中でルイズたちは各々直ぐに攻撃に移れるように、己の獲物を握り締めながら辺りを見渡してた。そんな時、士郎がピタリと足を止めると廊下
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