第十章 イーヴァルディの勇者
第六話 曝される正体
[2/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
お茶を詰め込まれ、無理矢理飲み干すこととなった。
「「…………ちっ」」
微かに苛立ちと憎しみに満ちた二つの舌打ちを耳にしながら、士郎はこんなことになった経緯について思いを馳せた。
そう、事の起こりは三日前のこと。まだ日が昇りきる前のことだった。タバサの救出のため、まずは手がかりを得ようとタバサの実家である旧オルレアン公邸に向かおうと魔法学院の門から一人出た時のことだった。門の外には士郎を待ち受けるように、未だ暗い草原を背に、白み始め微かに残る星空の下、五人の人影と一匹の竜の姿があった。その姿に思わず足を止めた士郎に、五人の人影の内、最も小さな影が代表するかのように一歩前に踏み出すと、山脈から差し込む光に照らされた顔ににやりとした笑みを浮かべ言い放ったのだ。
「遅かったわね」……と、そこで全てを悟った士郎は、諦めるように溜め息を吐き項垂れると、無言で歩き出した。その背中を五人の人影と一匹の竜はついていき。それに士郎は何も言わなかった。
士郎は何時の間にか伏せていた顔を上げ、尻尾付近で両手でカップを持ち上げてちびちびとお茶を飲むギーシュとマリコルヌを見る。
一応は各々に対し帰るように注意はしたのだ。
見習いとはいえ近衛隊である水精霊騎士隊の隊員がここにいるのはまずいだろと言ったのだが、「隊長であるあんたが言うな」と言われてはそれ以上何かを言うことは出来なかった。水精霊騎士隊の残りの二人、ギムリとレイナールは士郎たちがいなくなったことに対する様々なフォローをするために学院に残ったそうだ。キュルケとロングビルは「シロウは地理に疎いでしょ」とガリアへの渡航経験を口にしながら「ニッコリ」と笑われては、無理矢理帰した後の事を思えば帰らせるわけにはいかず。……タバサを救出してはいいが学院に帰れないなんて洒落にならない。ルイズにあっては、「あんた使い魔。わたし主」と同じく「にっこり」笑われれば……もう何も言えない。
そんなこんなで最初の予定とは全く違う六人と一匹という大所帯でガリアに向かうことになった士郎は、ここまで来たら仕方がないと諦めの境地に至りながらも、三日後には何とか日が落ちる直前にはガリアとの国境まで辿り着き。そして今、士郎たちは国境を守る警備隊交代している隙を狙いシルフィードに乗って国境を超えているのだった。
もう何度目の溜め息を吐いたのか、気付けばシルフィードは高度を落とし、月明かりに薄ぼんやりと姿を浮かび上がらせている一つの邸宅の下に降り立とうとしていた。
時間はとっくに深夜である。
食事の後片付けを終え、シルフィードの背から降りた士郎たちの目に、月明かりに浮かび上がる旧オルレアン公邸の姿が映る。オルレアン公邸はラグドリアンの湖畔から漂ってくる霧により、その姿を朧に隠し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ