hujiwara=
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アメリカ
「嘘だろ?」
赤毛の痩せた男が静止した画面を食い入るように、信じられないと言った感じで見つめた。赤毛の男の友人、金髪の男は未だに衝撃から戻ってこられていない。相手が黒、彼は白。彼は決して弱くはない。国際アマチュア杯の代表だったこともある。しかし、盤面は一方的だった。軽やかにいなされた感じが否めない。まさに圧倒的だった。相手のレベルは、例えるならば、塔矢行洋クラス。そして、この黒にぴったりな例えがある。
「sai・・・」
一昨年から姿を消したsai。そのsaiの石の運びがこのパソコンに映し出されている。それだけではない。それ以上に信じられないことが、右上の対局情報に書かれている。
white:hujiwara
「ありえないだろ!?だって、君の相手は、この前塔矢行洋と戦ったhujiwaraじゃないか!」
「・・・実力を、隠してたってことか?」
hujiwaraがsaiに化けていた?二人とも何が何だか分からなかった。ただただ、この状況に圧倒されるばかりだ。
「hujiwara・・・何者なんだ・・・」
中国
「hujiwara・・・前々からネットでは話題になっていた。日本のプロ並のアマチュア。・・・それがどうだ、この盤面。・・・saiを嫌というほど連想させる」
相手は数年前の国際アマチュア杯に出場していたアメリカの代表だ。saiについては何度か話し合った。
「hujiwaraでもsaiでも勝つことは容易だろうが、この打ち方はなんだ。圧倒的な強さだが、何か、制御できていない。saiが考える時間は全ての手において短かった。そして、予想外の場所に打つのが目立った」
オランダ
「hujiwaraは、saiだったのか!?」
「でもこの前の塔矢行洋戦では力の限り頑張ったって感じだったのに・・・同一人物なんですか?マスター。演技しているなんて思えません」
「いや、hujiwaraの名前を使ってsaiが打っていたという可能性もある。saiがhujiwaraの師匠だったという可能性が・・・」
一時間半前
和谷はワールドネット囲碁にログインした。どの対局を観戦しようかと画面をスクロールしていたら、偶然佐為を見つけた。あいつ受験生なのにネット碁やってていいのかよ、と思いながらも、佐為の対局へのリンクをクリックした。対局は30手ほど進んでいて、佐為は白だった。一目見て白は優勢だと分かる。しかし、読み進めていく内にいやな汗が背中にじわじわ出てきた。
「佐(sa)為(i)・・・?」
呟いた友人の名前はネット碁最強の棋士と同じ音だった。震える手で携帯をポケットから出してヒカルの連絡先を開いた。
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