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東方虚空伝
第二章   [ 神 鳴 ]
二十七話 神々の戦 終幕
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すると諏訪子の身体からどす黒い陽炎の様なものが立ち昇り諏訪子を貫いていた剣が一瞬にして“朽ちた”
 その光景に唖然としている天照と須佐之男に諏訪子が顔を上げ視線を向ける。ルーミアは諏訪子の瞳を見て驚愕した。
 琥珀色だったその瞳は諏訪子の身体を覆っている陽炎と同じ色に染まっていたのだ。ルーミアは今自分が見ている“モノ”が何なのか解らない。確かに諏訪子の筈だ、でも諏訪子とは思えない。

「……諏訪子…なの?」

 ルーミアの疑問に答える者は居なかった。そして再び諏訪子が呟きだす。

「…あんた達に…あんた達に…あんた達に…あんた達に…あんた達に…あんた達に…あんた達に…あんた達に………あんた達なんかに!!あたしの国から出て行け!!!!」

 その叫びに呼応する様に諏訪子から立ち昇っていたどす黒い陽炎が密度を増し溢れ出す。先程のルーミアの闇よりも暗い暗い黒の靄が諏訪子を完全に包み込み更に広がっていき、そして徐々にその形を変え遂にその姿を定着させた。
 どす黒い色をした八つ首の大蛇。首の一つ一つが二十メートルもあり全長百メートルを超える巨大な化け物の姿だった。
 その身体からはどす黒い陽炎が立ち昇り爆発的な神力を放っている。黒い大蛇から放たれる陽炎が火の粉の様に森や大地に降り注ぐと木々は急速に枯れ落ち大地の土は無惨に腐り果て次々に大地が死んでいく。

「…な、なんだよアレは…」
「………」

 迸る圧倒的な神力と禍々しい気配、そして目の前で起こっている光景に天照と須佐之男は気圧される。
 この戦場において諏訪の軍も大和の軍も一番重要で当たり前の事実を失念していた。それは諏訪子が“祟り神”であるという事を。
 この地に出現したおそらく最古の神にして最初の祟り神である諏訪子の本来の姿があの威容なのだろう。

ヴォォォォォォォォォォォ!!!!!!

 八つ首の蛇が咆哮し十六の瞳が獲物に向けられる。そして八つの顎が天照と須佐之男目掛けて襲い掛かった。

「チィッ!!」
「くッ!」

 二人はその猛撃を辛うじて躱し距離を取るが八つ首の蛇は距離を取った天照達を追って暴れ狂った。
 雄叫びを上げ、大地に牙を立て、木々を貪り、口からは祟りの黒炎を吐き大地に死と破壊を広げていく。
 蛇に蹂躙された場所はどす黒い瘴気のが漂う死の土地へと変わっていた。

「……醜悪な……」

 荒れ狂い、破壊し、祟りを撒き散らす蛇に天照はそう吐き捨てる。そして大蛇に向け三十以上の火球を撃ち込んだ。
 須佐之男も数十本の剣と十匹の水龍を大蛇に向け一斉に放つ。しかし火球は黒い陽炎に遮られ、剣は大蛇の身体に触れた瞬間全て朽ち果て、水の龍は腐り四散した。

「「 ッ!? 」」

 自分達の攻撃が完全に無力化され天照達は激しく動揺する
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