第2部:学祭1日目
第9話『嫉妬』
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「お姉ちゃんから、手を引いてくれますね」
誠の目の前で、いたるに包丁を突き付ける憂。
生唾を飲み込みながら、誠は静かに、しかしはっきりと、言った。
「…手を引かなくても、唯ちゃんはすでに『ごめん』と言っています」
「…」
「確かに、二股をかけた状態で唯ちゃんをその気にさせたのは申し訳ないと思ってる。
でも、唯ちゃんへの思いは、本当だったんです。
世界や言葉だって同じだった…。
誰を一番に取ることもできないまま、ずるずるずるずると流された揚句、この状態になったんですけどね。
それに…悪いのは俺一人で、いたるには何の罪もない。
いたるは命を奪われる理由なんて、何もないのに!」
すると、憂はくすくすと笑いながら、
「貴方が命を亡くしたところで何も変わりません。死なんて一瞬の痛み。
それよりも、貴方の大切な人を失わせて、生き地獄に突き落とすのも悪くないと思って」
「…正気…ですか…」
「正気です」
「そんな…」
呆然とする誠。
くすくすと笑う憂。
と、その時、
ドンッ!!
後ろから体当たりを受け、憂は思わず包丁といたるを手放す。
「いたる!!」
あわてて誠は、前方に飛んで来たいたるを腕にキャッチする。
包丁のほうは、床を大きく弾んで、やがて動きを止める。
誠はいたるが生きているのを見て、大きく安心のため息をついた。
「いたるちゃん、大丈夫!?」
声をかけてきたのは、言葉の妹、心。
「心ちゃん!?」
向こうを見ると、憂が両腕を抑えられ、騎乗位で言葉に組み敷かれていた。
「離して! 離してよ!!」
「いったいどういうことですか!? 誠君の妹、それも子供を盾にとって!?」
つかみ合う腕を振り回しながら、があがあと2人はわめいている。
「サンキュー、言葉!」
「あ、いえ…急いできて、何やら騒がしいと思ったから…」
言葉は相手の手首を抑え、ぐっと力を入れていく。
バタバタする憂の手足が、だんだんと静まっていく。
やがて動きが、止まった。
「平沢さんの妹だそうですね。…とりあえず、秋山さんに連絡を」
そうしたほうが、いいだろうな。
「ほ、包丁どうしよう…?」
包丁を取った心はおびえながら話す。
「とりあえず、俺が預かる。この子とはじっくりと話したい。」
誠は、とりあえず気分を落ち着けた。
なるほど、憂は、信じられないぐらいにうなだれてしまっていた。
「あ…う…」
その時、腕の中のいたるが寝がえりをうった。
「いたる?」
「あ…おにーちゃん…?」
薄目でいたるは、呟くように答えた。
「良かった…無事だったんだ…」
急にいたるは元気になって、誠の首に飛びつきながら、
「おにーちゃ! ハンバーグたべ
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