第一部
終幕
終幕
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………………」
なんつーか、アクロバッティングだ。何? 人は胃袋を口から出すと、あんな風に戻さないといけないわけ? …………俺は一生胃袋を出さんぞ。
再び保健室に着いた俺は、治療? 中のカエルを横目に、あいつの到着を待った。
同じ校内だ。数分もしない内にあいつは来た。
「失礼します」
相も変わらずのキザな声が、カエルの胃酸でネットリとした保健室に響く。
「ミーくん、招いてくれてありがとう」
「なあに。いいってことよ。まあ、ゆっくりしていけや」
俺は空いた席にあいつ──ナメクジを促す。
「フフ。今日はぁいつにも増して、紳士的ですねぇ」
「だろ?」
「ああ、そうそう。そんな紳士的なミーくんにお土産があるだよ」
そう言って、ナメクジは持ってきたバックから、一冊の本を取り出す。
「これは……」
「『蛇の巣』。半世紀前に英国人の書いた短編小説さ。この前お風呂場で言った本だよ。是非読んで、感想も聞かせて欲しい」
「『蛇の巣』……ねぇ」
洒落が効いているというかなんというか。
「ちなみにどんな内容なんだ?」
「読んでみてからのお楽しみ……なんだけど、そうだね。強いて言うなら、とある男性と女性の痴話喧嘩を描いたものだよ」
「……なあ? ずっと訊きたかった事があるんだが」
「なんだい?」
「……てめェは男なのか?」
「うん」
「……てめェは女なのか?」
「うん」
………………うん、じゃわからねぇえええええええええええええ!
「便所はどっちに行くんだよ!」
「んー。気分かな」
「気分ってなんだぁああああああああああああああああ!」
「アハハ」
何が可笑しいんだ、このナメクジが。と、その時だ。
「ゲロォ。私抜きで楽しそうにしないで」
おお、カエル。意外と早かったな。最悪、昼休み中は無理だと思っていたのに。
「バナナがあるんだ。てめェも食えよ」
「…………ケロ」
「ボクもいいかな?」
「ダメなら呼ばねえよ」
そう言って、俺は一本ずつバナナを回す。
「おお、なかなかいいバナナだね」
「そんなことわかるのかよ?」
「ホンモノは匂いが違うからね」
……いや、バナナにホンモノもニセモノもないだろうがよ。
「ケロ。でも本当に美味しそう」
当然だ。なんせ、俺のなけなしの金が込められてる。
「さて」
俺はゆっくりと胸の前で両手をあわせる。
カエルとナメクジもそれに習った。
「「「いただきます」」」
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