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乱世の確率事象改変
覇王、乱世の箱を問う
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「ここが……曹孟徳の治める……」
 ここは曹孟徳が治める地の中で最も発展した場所。
 城門を潜り、その街並みを見た少女は――――絶句した。
 整えられた街並みはこれまで見てきたどの街とも比べるまでも無く活気に溢れ、人々の生きる力が声に乗って耳に響いてくる。
 あまりに自身の主の治める地の安穏とした空気とは違いすぎたが立ち止まる訳にも行かず、ただ中央の城へと歩を進める。
 茶髪の髪を後ろで纏め上げ、服装は敬愛する主とほぼ同じ作りのいつも着ているモノ……ではなく、真っ白な純白の使者用の服であった。
 普段ならばそのような少し豪奢な服など着る事の無い彼女は、今回いやいやながらもその服を着てこの場に来ている。
 正直、知っている人がその少女を見ても誰かと間違うくらいには別人に見える。今回の訪問ではそれも功を奏しているかもしれない。
 ここにいる理由、それは先の戦の後に行われた酒宴での一人の、腹立たしい事この上ない男の提案を自分達で煮詰めた結果のこと。
 ある程度纏まり、誰を使者に出すかと話が上がった時、本来ならば張純あたりが赴くはずであったのだが……彼女の提案で関靖が任命されてしまった。
「私のような名が売れていないモノが使いに出るよりも、伯珪様の片腕である関靖さんが行くのが妥当かと思いますが……」
 涼しげな顔でそう言われては、部下に甘い白蓮が聞かないはずも無かった。それに確かに張純の言は的を得ていたと言ってもいいが、しかし一つ不安があった。
 関靖こと牡丹は思考が暴走しがちであり、こと白蓮の事に関するとそれが顕著に表れてしまうからである。
「牡丹……お前……絶対に落ち着いて交渉しろよ?」
 牡丹の主の言葉は、きっと昔ならば心底疑っていますというような訝しげな表情で発されただろう。
 しかし今回は全く疑いなどなく、自身の部下への信頼のみが送られていた。
 そこまで白蓮に期待されて、それを裏切るようなら忠臣とは呼べない。
 絶対に成功させてみせる。
 今は幽州にいる主の期待の眼差しを思い出しながら、牡丹は心に強く決意して曹操の住まう城へと歩みを進めて行った。


 †


 城門にて曹孟徳への使い、さらには幽州より極秘の使者であると伝えた牡丹の前に現れたのは一人の長い金髪を風にわさわさと棚引かせた少女であった。
「ええと、幽州は公孫賛が使者で関靖と言います」
「風は程cというのですよー。どうぞこちらにー。ああ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよー」
 どこか気が抜けるような間延びした口調は瞬時に牡丹の警戒心をある程度まで下げた。
 肩の力を抜き、堅苦しい服ではあるが今出来る最大のリラックス状態まで落ちたといってもいい。
 彼女の発する言葉にはそれだけ人に与える影響力があった。
 てくてくと前を歩く程cを観察
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