覇王、乱世の箱を問う
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なかった。
交渉の根幹を左右するほどの問題であったのに。
この交渉を提案した輩は乱世に於いて漁夫の利を得ようとしているのだ。
誰かと誰かを争わせ、その間に自身は別のモノを狙うか、その間に何食わぬ顔で参加し始める、ということ。
この私でさえ駒の一つとみなしている訳だ。腹立たしい、等とは思わない。むしろ面白い、そして愛おしい。心が歓喜に震え、敵対者の成長に高揚してくる。
予想では……それを行おうとする者は、知っている限りで三人。
そして公孫賛個人に対して迅速に、他諸侯にバレる事も違和感を持たせる事も無く働きかけが出来るモノは……たった一人。
「……いませんね」
関靖は漸く私の真の狙いに気付いたようで、真っ青な顔の慄く唇から嘘の言葉が紡がれた。
それでは遅い。もはやこの問答に価値は無く、これ以上続けても無意味である。
ならば早々に打ち切ってこちらの交換条件を呑んでもらうとしよう。
「そう、質問に答えてくれて感謝する。では密盟の話に戻ろう。我が軍は公孫軍と共に袁家打倒に参加する」
「ありがとうござ――――」
「ただし! それはその方達が力を示してこそ参加するに足る。我が国の民、いたずらに失う訳にはいかぬ。己が国ならば己が力で守り抜いてみせよ」
言葉を遮り、こちらの条件を示すと関靖の表情は絶望に染まった。己が失態によって一番望んだ結果は得られなかったのだから当然だろう。
彼女を責める事は誰にもできはしない。戯れの問いかけで先が決まるなど油断した思考では予想出来るはずがないのだから。
私達の策が成功したというだけなのだから。
「……つまり、攻められても助けないが攻めるならば助力を行う、と?」
「そう取ってくれて構わない」
皮肉を込めて棘のある言葉を投げかけるがそれは自分達の国も同じだから強くは言えないし責める事も出来ない。
先に侵略を行う程の気概を公孫賛が持てたなら、こちらとしても嬉しい事ばかりである。
関靖は唇を噛みしめ、苦悶の表情で沈黙し始めた。
悩んでいるのだろう。今ここで、袁家に攻め入ると言いたいはず。しかしそれを決めるのは関靖では無く公孫賛でなくてはならない。
もう一度その件を伝える時間、煮詰める期間は……もはや残されてはいない。そして私の予想では公孫賛は自分から攻める事はしない。
これで公孫賛は己が力のみで生き残らなければならなくなった。乗り越える事が出来たのなら……私にとって最上の好敵手となり得るでしょう。
後に弱った公孫賛が表だって同盟を結ぶ相手は誰か、私と乱世にて敵対を宣言している者は誰か。
簡単な事だ。これはあの、今でも私のモノにならない、私や孫策と同類であるあの男の策。自身の友である公孫賛を助け、尚且つ自軍が力を付ける時を得る為に考え出された策。
大陸の
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