覇王、乱世の箱を問う
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答えがあなた達の命運を分ける。
私の軍師達は不思議そうな顔を一瞬だけ向けたが、それでも何も言わずに前を向きなおした。
「先に言っておく、個人的に聞いてみたい事だから気負わずに答えて欲しい」
口調を少し砕いて言うと関靖は一寸だけ表情が穏やかになった。まだ気を抜くのは早いというのに。
「では、問おう。
大きな箱、小さな箱、煌びやかな箱、質素な箱。その他にも様々な箱が並べられているとする。中身は開けてみないと分からない。
その中から一つを選べと言われて、あなたならどれを選ぶ? 別にどれを選ぼうと何も言わないから本心で述べなさい」
心底、怪訝な表情を浮かべてから、額に手を当てて悩みだした関靖。対して軍師達は驚愕の表情に変わった。
この質問の意図をすぐさま見抜けたなら……あなたには軍師の才か、王才があると言える。
しばらく悩んだ関靖はおずおずと、申し訳なさそうに口を開いた。
「その……白い箱はあるんでしょうか? 出来れば可愛い馬の絵柄が入っているといいのですが」
一瞬、彼女の発言に私の思考が止まった。あまりに面白くて。
「……そうね、あなたが望むのならばあるでしょう」
なるほど、彼女はまさしく公孫賛の片腕で、彼女だけの忠臣である。
「ならそれにします。我が主への贈り物にするので」
キラキラと楽しそうに言う関靖の表情は恋をする少女特有のモノだった。
春蘭と同じ存在か。いや、内政能力の高い春蘭、と言った所。……その見事な忠誠心と想いを向けて貰える公孫賛は幸せ者でしょうね。
「ふふ、そう。ならばあなたの主ならどれを選ぶと思う?」
続けて、一番尋ねたい事を関靖にぶつけると、
「……そうですね。多分、他に人がいると考えて皆の意見を聞いてから、被っていないモノを選ぶのではないでしょうか」
関靖が予想を答え、私は内心で笑みを深くした。
かかった。
今回、乱世の交渉は公孫賛が出した策では無い。関靖の主は変わりないという事か。
「なら……そうね、箱は皆に上げるから別のモノが欲しい、と言いそうな人物はあなたの知り合いにいるかしら? ……国の外でも構わないわ」
最後に付け足した言葉に関靖の表情が少し憎らしげであるが親愛の情を向けるモノに変わり、そこで確信に至った。
軍の内部にいないのであれば、そのような事を思いつくのはあれしかいない。
この問いかけは乱世を表している。
箱は治める土地、もしくは諸侯の持っているモノ。選べと言われてはいそうですかと答えるような輩は王足りえない。
忠臣たる関靖の答えた公孫賛が選ぶ予想はまさしく彼女の人となりを表していた。
つまり、どこまで行っても彼女は中立なのだ。
この問いかけに答えるかは関靖の自由であったが、警戒の解けたあなたではこの話の意図は余計に見抜け
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