覇王、乱世の箱を問う
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モノで、とどまる事を知りません。
袁家が目指す先に、もしやと思われる予想がございます。それが天下の塗り替え、袁家による大陸支配でございます。
いち早くその危険性に気付いた我が主は、次に狙われるのは後背の憂いたる幽州では無いのかと考え、その為に今、力を蓄えております。しかし……」
再度言葉を区切った関靖は周りに視線を巡らせ、胸を張り、瞳に不敵な輝きを一瞬だけ見せてから私を見つめなおした。
「我ら幽州の民は古くから敵対してきたモノがおり、その警戒にも力を裂かねばいけません。
そこで、万が一袁家が攻めてきた時に曹孟徳様率いる、大陸でも一、二を争うほど精強な軍のお力を貸して頂きたいのです。相応の対価、交換条件の判断は私に一任されております故、ご一考をお願い申し上げます」
言い切り、すっと頭を垂れる関靖。
風による心理戦、謁見の間に着くまでと今の気持ちの格差が効いているのか、強く出る事はせず、交渉の判断の大きなモノをこちらに預けて来た。
そんな関靖を見ていて、そして説明を聞いていてやはり疑問に思った。
これは公孫賛陣営が出した策では無いのではないか。
文が届いた時から僅かな違和感があった。
何度か言葉を交わしたことがあるし、公孫賛の人となりは知っている。彼女がこんなに見事に、迅速に動く事が出来るだろうか。
いくら調べても軍の内部にとびきり優秀である軍師はおらず、内への思考が強く、外敵対策に頭を悩ませていた彼女が。
中立、と呼ぶのが妥当である彼女の性格からは、どうしても今回の交渉という出来事が異常に過ぎるのだ。
確かに連合に参加した理由までは……評価に値する。先を見越して動いたのだ。まさしく彼女も一人の王であるといえる。家たる幽州を守るという意識の発露であると断定出来るだろう。
だが……その先、今後の乱世を予測するとなると全く違う思考が必要。袁家からの理由づけを防ぐために参加したのに、安心せずにさらに警戒を強めるという思考がまずおかしいのだ。
それならば参加の時点でその思考に至っているのが通常なはず。
軽い矛盾点がある今の話を煮詰めると、戦の直後に誰かが彼女達に入れ知恵をした、という可能性が浮かび上がる。
自分達で気付けたか、と言われれば大抵は否である。一旦、身内だけで凝り固まってしまった安心感と思考を解すためには広い視点もしくは外部からの意見が必要なのだから。
それを……確かめさせて貰いましょうか。
交渉を思いついたのが本当に公孫賛ならば、彼女を強大な、油断できない好敵手と認識した上で密約の話を受けましょう。私が見誤っていたのだと評価を改めて。
もし違うのならば――――
「関靖よ。一つ戯れに尋ねたい事があるが、よいか?」
「……答えられるモノであればお答え致します」
これに対する
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