覇王、乱世の箱を問う
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て戦ってもいい相手であると。
そして、この戦後処理等で忙しい時期に白馬長史の片腕と呼ばれている者を改めて使者に出し、交渉を行う姿勢も評価に値した。
だからこそ、先手を取らせて貰う。そして見極めさせて貰おう。
今回の交渉にどの程度乗ってよいのか。あなたが使いに出した片腕の力量次第では考えてみてもいいわ、公孫賛。
ただ、違和感が思考の端に翳りを齎している。この交渉を考えたのは本当に――――
「急な訪問申し訳ありません、曹孟徳様。お初にお目にかかります。我が主、公孫伯珪様よりの使者として参りました関靖と申します。このような交渉の場を設けて頂き、誠にありがとうございます」
気圧されていた彼女は口を横一文字に引き結び、ゆっくりと謁見の間を歩き、立ち止まってからやや頭を垂れて告げた。
その姿に関心を、そしてこれからの対応への楽しみを籠めて少し微笑み言葉を返す。
「遠い所、ご苦労であった。先の文で案件は聞いている。その内容に変更はあるか?」
「事前にお送り致しました文には簡易なモノしか書き連ねていないと思われますので、少し自身から説明を行ってもよろしいでしょうか?」
彼女が聞きたいのはこれが誰にも聞かせられない、他の軍にばれてはいけない密約を結ぶためなのだから、諜報対策は万全かということ。
その点については問題は無い。今、謁見の間に居るのは確実に信を置いている忠臣たる者達しかいない。そして誰も聞き耳を立てることが出来ない状態にしてある。
「よい。申してみよ」
「ありがとうございます。では、
先の反董卓連合に於いて、我が主は家たる幽州の平穏を守る為に参加致しました。大陸の平穏は幽州の平穏である、と。
ただ、裏の参加理由もございました。連合を組むに当たり声を上げた者は袁紹。その強大なる権力は、大陸の端を治める我が主にとっては何を押し付けられても不思議ではないモノ。
連合に参加せずに居たのならば、戦が終わった後、逆賊と言われても言い返す事が出来ません。だからこそ我が主は先の戦に参加を決心致しました」
そこで一旦言葉を区切った関靖は私をちらと覗き見た。
静かに、口の端に笑みを浮かべてその瞳を一瞥すると、目線が少しぶれたが、それでも力強く見つめ返してきた。
自身の主への忠誠という一本の芯から、その心は折れないというわけか。
もう一度目を細めて先を促すと、彼女は一度瞼を閉じ、さらに光が強くなった瞳で私を見据えて続きを語る。
「戦が終わり、大陸は平穏になった……と言えましょう。ですが袁家は、諸侯の権力争いの戦端を開いた袁家が、この先に目指すモノはなんでありましょうか。
天子である帝がいないにも関わらず連合は組まれ、帝がお住まいになられていたにも関わらず洛陽の都が攻められました。
人の欲というモノは恐ろしい
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