覇王、乱世の箱を問う
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やり方。意識の外、まさかこの場で信頼を置く者の名が出るとは思わなかった。
そして星は簡単に真名を預ける人物では無い。それを良く知る牡丹は彼女がどのような人物かも理解してしまった。
武の身体運びが出来ているわけでは無いのが見て取れたのだから、彼女は星が真名を許す程の才を認める……軍師なのだと。
そして見事なのは一つ。
星の友であるというのならば、警戒を再度高める必要は無いのだという事。
敢えて親しげに真名を出す事によって牡丹自身にそれも伝えているのだから。
「程cさんは星の友達なんですね」
牡丹はふっと微笑み話しかける。程cの発言の中、暗に隠された事柄に気付けばもはや警戒心などどこにもありはしなかった。
「ふふ、謁見の間に着くまで少し星ちゃんの事を話しませんか?」
優しく、柔らかに微笑み返した程cの言葉に牡丹は頷き、自身が見てきた友の事を話し、自分の知らない友の姿を聞かせて貰った。
固くなった思考は十分に解れ、今ならば最高の状態で交渉に臨める。
牡丹はそう考えながら、そして程cの気遣いに感謝しながら、二人は謁見の間に向かった。
ただ……ここで一つ牡丹はミスを犯したと言える。
如何に相手が友である星と旧知の仲だとしても、警戒を解いてはいけなかった。
これが伏竜と鳳雛の二人ならば、程cへの警戒は高まり、食えない相手であると認識し、互いに開けられる情報を事前に交換し合っただろう。
黒衣の男ならば、軽く語らいながらも次に待ち受ける相手の膨大さから気を抜かずに、着々と己が行う交渉の為に理論を高めて行ったであろうことは予測に容易い。
そう、まさしくここは覇王の手の中なのだから。
程cは既に曹操の軍師。ならば求めるモノは何であるか。
それを見極められなければいけなかった。
†
「幽州よりの使者、関靖様をお連れしましたー」
扉が開かれ、最近新たに陣営に加わった風が声を上げ、すすっと脇を通って己が立ち位置に戻る。
開かれた扉に佇む一人の少女、公孫賛からの使いである関靖に対して、玉座に座ったまますっと目を細めて見据える。
茫然。まさしくその言葉が相応しい。彼女は気圧されていた。謁見の間に並び立つ私の愛する忠臣達からの視線、そして私がぶつける覇気に対して。
風も中々に意地が悪い。警戒心を解きに掛かるので共通の知り合いのいる自分が出迎えると言ってのけたのだから。交渉の主導権を先に私が握り易くする為にそれを行う、と。
つまり彼女はこう言いたいのだ。この交渉は何としても有利に進めなければこの先危うい事態になりかねない、と。
今回の密使は文で簡単な内容が先に届いている。
私は公孫賛を見直した。乱世に於いて先を見越して動く事が出来る真の英傑であると。全ての手段を用い
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