覇王、乱世の箱を問う
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する事幾分、牡丹は不思議なモノに目が行った。
彼女の頭に一つの不思議な人形が乗っている。
こちらをじろりと睨むその人形はその手にぐるぐると渦巻く線の入った飴を持たされていた。
「おうおう姉ちゃん。あんまりじろじろ見てくれるな、照れるじゃねーか」
ふいに、何の突拍子も無くどこからか声が聞こえた。
牡丹はあまりの出来事に目を見開き、ああ、この人形が喋ったのだと気付いた頃にビシリと飴で自身を差される。
「オレの事を人形だと思ってんのか? 残念、オレは風の――――」
「これ、宝ャ。お客様に対してなんて口のきき方ですか」
ぴたりと歩みを止め、自身の頭に乗せている不思議な人形を手に取って弄繰り回す程cにしばし呆然としてしまう。
彼女の一人芝居であるのか、人形からの声は彼女のモノに似ていた。しかし口は全く動いてはいない。
「おお、申し訳ないのです。この子は可愛い女の人が好きな変態さんなので少し気分が高揚してしまったようでして」
眠たげな眼を牡丹に向けて話す程cからは嘘を言っているようには感じられなかった。
「い、いえ、こちらこそお気になさらず。……でもそれ、どうやって――――」
「オレの身体に興味があるってのかい? だが美人の頼みでもさすがに教えられねぇな」
ぴしゃりと拒絶され、牡丹は人形如きにとイラつきを覚えたが、自分がこの少女の調子に呑まれている事に今更気付いた。
腹に力を込め、自分がしっかりしなければ主の名まで貶めてしまうと気合を入れ、
「ふふ、分かりました。……程cさんのお友達なんですね。無礼をお許しください」
程cに一つ、隠れた宣言をする。
きっとこれは自分を試しているんだ。曹操はこの少女にある程度私の事を見極めさせる気でいるんだ。
そう考えた牡丹は情報を与えないように線を引いた。こちらが乗ったのだからもうこれ以上はそちらのやり方には乗らない、と。
例えば、これがかの劉備軍の天才軍師二人であったならば、何かしら他の切り口を探して程c自身の人となりを見つけるモノを探しただろう。
牡丹の、腹立たしい事に気になっている男ならば、程cと共に意味不明な空間を作り出して空気に溶け込んでしまったかもしれない。
しかし牡丹はただ純粋に任務を行う為に、己が主からの依頼を為す事のみ頭にある。だからこそ警戒を張り直し、気の置けない相手であると意識を持ち直した。
そして……それを読み取れない程cでは無い。
牡丹は彼女の事で知らない事があった。
程cという少女は最近曹操の元に士官した軍師である。そして牡丹自身が肩を並べる、同僚であり友でもある星の旧知の友であった。
「ふむ、さすがは星ちゃんが仕える公孫賛様の片腕さんですねー」
程cの言葉を聞いた牡丹の思考はピタリと止まる。
奇襲と呼ぶに相応しい
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