暁 〜小説投稿サイト〜
さんねんななくみ当番日誌
xx/xx 山田真彩

[2]次話






「これで赤点回避やな」



白い綺麗に並んだ歯をだして、

目を2,3ミリくらい細めて、

彼はニカッと音が出るくらいめいっぱい笑った。



え、あたしの手柄やろ、これ。

だって勉強教えたんあたしやもん。

下駄箱を開けながら呟くと

まあ元がええさかい、教えんのも簡単やろ。

とマフラーを巻いてまたニカッと笑う。

「うざー!もう教えんでええー?」

「あかん、なんか奢るから許してや」

まじ今月は金欠なんやけどねーなんていいながら

財布を取り出した。

色とりどりのミサンガがついた手首。

あんがい細いなーとか、

この手であんな硬いボール投げとるんやなーとか

なんとなく考えて、空を見る。

オレンジ色の夕焼けだ。



「さぶい」

「寒い、やろ。さ、む、い。」

あたしの指摘に振り返ると、

「さぶい!!塾行く前にどっか寄ってってもええ??」

と一言。

よっしゃ、あたしはガッツポーズ。

もちろん心の中で。

「別にええけど」

「じゃあそこで奢るわ」

なんとも可愛くない返事をしたものだ。

言ってから後悔するのはいつものこと。

あたしが「もちろん」とか語尾にハートが付く勢いで言ったら

奴は気持ち悪がるか、からかうか。

どちらかしか考えられん。

やめよやめよ。そっちのほうが後悔しそ。



「##NAME1##、##NAME2##さーん」

前を歩いてた彼は、またくるりと振り返ってそう言った。

「なんやねんいきなり」

「なんとなく、やて。」

また前を向く。何がしたかったのだろうか。

つくづく変なやつだ。

でも、悪い気分じゃない。

自転車を押す後ろ姿を見てちょっと思う。

「ふたりのり、してこ!」



私の声に、少し驚いたように後ろを向くと、

またあの「ニカッ」て音がしそうな笑顔。







ねえ、龍。

もっと名前をよんでよ。

なんてまだ言えそうもない。

言う予定もない。

アタシらしくないから。








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