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さんすくみっ
第一部
第二幕 畜生部活に入る
第二幕 畜生部活に入る
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人間以外がまともに操ることができない。
「そんな文字の羅列の何がいいんだか」
「おっと。それは聞き捨てならないね。君は小説を読んだことがあるからそんな口を効くのかな?」
 口調が変わる。あー。もしかして地雷?
「……いや、ねえけど?」
「なら、短いのでいいから、名作と呼ばれるものを一冊読んでみるといい。なんなら、ボクのオススメを何冊か貸してあげるよ。そして、その後にまた同じ言葉が吐けるのなら、今度は真剣に討論しよう」
「…………あー。おっけ。わかった。じゃあすこぶる短いのを一冊今度貸せよ」
「フフ。吠え面かく君が今から楽しみだよ」
 誰が吠え面なんざかくか。
「文字の羅列には違いないだろうに」
「いや、全然違うさ。これは至高の『詩』だ」
 ……また『詩』かよ。
「『ありがとう』なんかと同じやつか?」
「……ほう。『ありがとう』が『詩』か。それは誰が言ったんだい?」
「ゴリラだよ」
「…………フフ。あの先生、相変わらず顔に似合わず面白いことを言うんだね」
「何を言っている。ゴリラは顔も面白い」
 全くもって失礼だ。
「あっはっはっは。成る程その通りだ。……ふむ。確かに『ありがとう』は素晴らしい『詩』だ。それに疑い用はない。多少方向性は違うかもしれないが、小説の究極系が『ありがとう』と言ってもいいかもしれない」
「いや全然違うだろ」
 あんなクソ長いもんと一言が同じ筈がない。
「ふむ。例えばこの本にあるこの一説、『雨がやんだ』にはどんな意味が含まれていると思う?」
「はあ?」
 雨がやんだに雨がやんだ以外の意味があるかよ。
「正解は『私は房子とお昼にイタ飯屋で食事をする時に、不倫の約束を取り付けようと決心した』だ」
「はぁあああああああああああああああああああ!?」
 なんじゃそりゃ。雨がやんだが、どうなりゃそんなよくわからん決心になるんだよ。
「フフ。それが『ありがとう』と同じところだよ。短い文の中にその何倍もの『心』を入れている。そんな文を人間は『詩』なんて表現するんだ。けれども、小説はそれだけじゃない。逆の特性も持っている」
「逆の特性?」
「この本『雨の日の午後』は前六百以上のページ数を持つが、最終的にこの本が語りたかったことは『朝ごはんは毎日食べましょう』ってことなんだ」
 …………最早何が何やら。
「それだけなら、それだけ言えばいいじゃないか」
「フフ。確かにね。でもそれじゃあ、聞いた君には深く心に残らない。違うかい?」
「……そりゃあ」
 はいはいとしか思わんがな。
「他にも読み手に考えさせたりとか、何かを共感してもらったりとか、そんな沢山の役割が本一冊に詰まっているんだ。まあ、君は頭も良さそうだからすぐにわかるさ」
 そう言って、ナメクジは立ち上がる。
「そろそろ身体を洗っ
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