第一部
第二幕 畜生部活に入る
第二幕 畜生部活に入る
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あるというのか。
「ケロン。前歯を金属バットで破壊するとか?」
この胃袋こぇええええええええ!?
「ひぃっ!?」
ほら、出っ歯ビビってんじゃねえか! 俺だってあいつの立場ならかなりビビるぞ。
「ケロン。でもそれくらいしないと、あの造形の改造は不可能です」
いや、それはわかるけどさ。
「あー。元のビーバーに戻るとかはムリなわけ?」
前歯を粉砕するよりはかなり人道的だと思うが。
「いえ、その、もうあそこには戻りたくないというか」
「はあ?」
「その、人間になる直前に現地妻や愛人達に、私が百十股をかけていることがバレてしまいまして」
「自業自得過ぎる!?」
もういいんじゃね?
こいつ、このまま不幸でいた方が良くね? 人間界的にもビーバー界的にも。
「そ、その、ご存知ないかもしれませんが、私達ビーバーの中では三桁股くらい普通で──」
「だったら堂々と齧歯類にもどれや!」
「さっきから」
ナメクジが本から目を逸らさず口を開けた。
「ミーくんは簡単に元に戻れると言っているけど、そんな方法知っているのかい?」
「いや、知らんが、人間になれたんなら、元にも戻る方法があるってのは──」
「それは文系のファンタジーな考え方」
…………ああ、そうだな。
一番簡単な例で言うと、死んだアリンコを生き返らせることはできない。いかに簡単にA→Bができたところで、B→Aにできるとは限らない。むしろ可逆よりも不可逆なことの方が多いはずだ。
「てめェも理系かよ」
「いや? ボクは見てのとおり文系さ。ただ、君があまりにボク達みたいなことを言うもんだから、ちょっとびっくりしてしまったよ」
…………ああ、確かに今のは俺らしくなかったのかもな。
「じゃあ訊くが、俺たちが元の畜生に戻ることは絶対に無理なのか?」
「さぁ?」
「…………」
別にその答えに怒りはしない。
こいつがあの『呪い』について知っているとは到底思えない。
「話の論点がズレてきてるね」
「ズラしたのはてめェだナメクジ」
とりあえず、こいつの顔面をどうにかするのが今回の議題である。
「前歯はそのままがいいのか?」
「これは僕のアイデンティティです。むしろ全面的に押し出す形で」
いいのか?
そんなこと言うと、最終的に芸人しかできなくなるぞ?
「……ちなみに芸能界に入る気は?」
「ジャニーズなら」
吉本だ馬鹿野郎。
「ケロォ。前歯にリボンを付けるとか?」
「胃袋、お前の面白い性癖は訊いてない」
「胃袋って呼び方はやめて!?」
「……面白い性癖ってのは否定しないのな」
……イケメンねえ。
「つか、やっぱり沢山の女にモテたいわけ?」
正直俺にはよくわからない価値観だ。
「そりゃ、折角男に産まれたのだから」
……
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