第一部
第二幕 畜生部活に入る
第二幕 畜生部活に入る
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それはもういいや。呼びたいように勝手に呼べばいい。……で、俺が何をやるって?」
「ゆ、指切り」
「今やったじゃねえか」
「そ、その。私だけ約束させるのは不平等だから。ミーくんも何か私に約束させてください」
「…………」
約束ねえ。
数学や科学の世界にも約束はごまんとある。かけ算や割り算は足し算や引き算よりも先にするとか、薬品の臭いを直接嗅ぐなとか。
ルールと言ってもいいかもしれないが、それとはちょっと違う気がする。……その違和感が一体なんであるかなんて、わからないけど。
……きっと、これも『いただきます』なんかと同じ、無駄に色んな何かが籠められた言葉の仲間なのだろう。少なくとも、言葉も無けりゃ、小指どころか手足も無い『元』俺等の世界にこんな約束なんてもん存在しなかった。
「ケロ? 指切りしないですか?」
「……いや、しよう」
俺が再び右手を差し出すと、胃袋女も同様に右手を出す。
「どんな約束にしますか? ……あんまり酷いものはダメですよ」
「酷いものねえ。……二度と俺の前で胃袋を出さないとか」
「ケロロ!? 極悪非道!?」
ハードル低いなぁおい。
こいつと約束したいことねぇ……。
「そういや、この間また歌を聴かせてくれるとか言ってたよな?」
「……ケロ。それはもうちょっと待って欲しいというか、もっと上手くなってからというか」
「………………」
女はダイナミックに目を逸らす。どんだけ自信が無いんだよ。
「よし。じゃあそれを約束しろ」
「ケロ?」
「お前の歌がまた聞きたいんだ。だからとっとと上手くなって聴かせやがれ」
「ケ、ケロォ……」
おい。何俯いてるんだよ。……そんなことされたら、こっちまでこっぱずかしいだろうが。
「ケロ。わかりました。頑張ります」
「ん」
そして、俺たちの小指を交差させる。
「「ゆーびきりげんまんうそついたら針千本のーます」」
昼食時間になった。
「ケロ。部室にいきませんか?」
「はあ?」
授業の片付けをしていると、隣の胃袋が目を輝かせながらそんなことを言ってきた。
「いやだ」
「ケロ?」
何が悲しくて昼休みまであんな地獄に赴かにゃならんのじゃ。そんなとこに行くくらいなら、昨日と同じくゴリラとタイマンで飯食ってる方が幾分かマシだ。
「で、でも部長さんも待ってますよ?」
「行かん」
ぶっちゃけ、それが一番嫌なんだよ。あんな気持ちの悪い生命体にゃ、もうできる限り会いたくない。
「ケロォ。どうしたら行ってくれますか?」
いや、むしろどうしててめェはそんなに行かせたいんだよ。ああ、もうめんどくせえ。
「……よし。じゃあお前が──」
まさか本気でやるとは思わなかった。
「ケロケロケロ。私の勝ちですね」
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