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リリカルってなんですか?
A's編
第三十一話 裏 前 (グレアム、クロノ)
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「なっ!?」

 その一言はクロノにとっても衝撃だった。

 グレアムは、時空管理局の英雄とみなされており、また時空管理局の穏健派の重鎮の一人でもある。その彼が退任するということは、時空管理局に大きな影響を与えることは間違いない。内部的にも外部的にもだ。

 ギル・グレアムという名前は過去の業績と相まって、この年齢になってもどこかで抑止力となっていた。つまり、背後にはグレアムが控えているという大きな抑止力だ。だからこそ、時空管理局内部には大きな影響力を持っているし、穏健派の重鎮として君臨できたのだ。

 その彼が退任するということは並大抵のことではない。利害関係や内部組織への影響力を考えると、やめます、と言って簡単にやめられるものではないだろう。引き継ぎに一年近く、それから後始末と合わせると三年は準備が必要だ。すぐにやめられるタイミングがあるとすれば、本当に彼が急死した時だけだろう。

「何を考えているのですか!?」

「クロノ―――この作戦の欠陥は先ほどの一つだけではないのだよ」

 そう言いながら、グレアムは懐からカードを取出した。そのカードはクロノにも見覚えがある。彼が今、持っているデュランダルにそっくりだ。

 もともと、デュランダルは今回の作戦の要だ。デュランダルが持つ強力な氷結魔法で永久凍結する。それが作戦の最終項目なのだから。だから、デュランダルに闇の書が封印できるほどの出力が出せるのか? というのが懐疑的な目で見られていた。だからこそ、クロノが先に試作品を使って、改良点を研究させていたのだから。

 その問題は目途がたった、と定例報告で報告されていたはずだった。

「確かにデュランダルのリミットを外して魔力を最大限つぎ込めば、闇の書の永久凍結は可能だ」

 それは11年前の闇の書事件で観測した暴走間際―――魔力が臨界に達し、一度落ちる瞬間だ―――の魔力から判断したので、ほぼ間違いないとのことである。

 それでも、クロノはグレアムの一言が聞き逃せなかった。

「リミットを外す?」

 通常、デバイスには自らのリンカーコアの限界を超えて行使しないようにリミッターが付けられている。それを外すとグレアムは言ったのだ。だからこそ、クロノはグレアムが退任するという理由に思いついた。

「まさか………」

 思い至ったクロノに共感したのかリーゼアリアとリーゼロッテも沈痛な面持ちで顔を伏せる。

「そうだ。私のリンカーコアの限界を振り絞ってようやく、と言ったところだ。老兵の花道としては、いささか後味の悪いものだがね」

 リンカーコアの限界を振り絞ると、何らかの後遺症が残ることは間違いない。一般的には出力の低下があげられる。それが、若いころの肉体ならまだ回復する余地は見込めるだろう
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