歌い手、勝負する
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「はあ・・・遅いわ、ラッテン」
「スイマセン、マスター。もう来ないものだろうと油断していました」
恐らく、もう無駄だと考えて僕が演奏を止めると、フルートの旋律も止まり、ラッテンさんが現れた。
恐らく、今の曲は『幻想曲、ハーメルンの笛吹き』だろう。
聞いたのはラッテンさんの演奏が初めてだけど、ノーネームの書庫に名前は載っていた。
「さて、これで貴方の歌は聴かないわ、奇跡の歌い手さん?」
「みたいですね・・・と言うか、ラッテンさんは今までどこにいたんですか?いないからすっかり油断してましたよ」
「火蜥蜴の皆さん相手に演奏。手駒を増やしていたら急に歌が聞こえてきて、驚いたのよ?」
「でしょうね。お互いにお互いが弱点なんですから」
音楽シリーズと言うのは、ものすごく大雑把に言えば、相手に感動を与えるのが効果だ。
そして、感動はより大きな感動で塗り替えることが出来る。
もとの感動が少しは残ったとしても、より大きな感動のほうが印象深くなるのだから、そちらの効果が現れる。
今回の場合、今いるのがハーメルンの街なこともあって、僕が奏でたレクイエムよりも、ラッテンさんが奏でた幻想曲の方が大きな感動を与え、ハーメルンの魔書を使うペストの削られた霊格をカバーしたのだ。
「さて、このまま続けても無駄になりそうですし」
僕は多鋭剣を飛ばして僕とラッテンさんを皆から分断する。
「僕たちは僕たちで、音楽勝負といきましょうか?」
「そうね。まず貴方を抑えておかないと。しなれても困るし♪マスター、そちらはお願いします」
「ええ、分かったわ。奇跡の歌い手の確保、任せたわよ」
「奏!無茶はしないで!」
「奏さん、後でお説教ですよ!」
そして、黒ウサギさんは後が怖くなりそうな言葉を残してどこかへと向かった。
「お説教か・・・後が怖い・・・」
「あら、彼女のお説教は怖いのかしら?」
「怖いですよ・・・今すぐに逃げ出したいです」
「あら、ならちょうどいいわ。私達のコミュニティの来ない?」
「そっちのほうがお説教は怖くなりそうなので、遠慮させていただきます」
その場合、六人がかりでのお説教になりそう・・・裏切りは、あの問題児達も怒るよね・・・
「あら、残念。それなら、勝って手に入れるしかないわね」
ラッテンさんはそう言って、持っていた魔笛をギフトカードにしまい、腰に吊り下げていた別のフルートを構えた。
「さっきまでの魔笛と違って、これはただのフルート。無駄なものを一切含まない、私の演奏をお聞かせしましょう」
「完全状態、ですか」
前にも何度か言っているが、僕たち“音楽シリーズ”はその音に加工をしなければ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ