焦がれる夏
拾漆 口火
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たピッチャーの中で、1番速い。
「初球から145キロ…」
バックネット裏の律子がつぶやいた。
「!?」
次の球、とにかく前で捉えようとバットを振った藤次の目線から、ボールが消えた。ストン、と落ちた。擦りもしない。
カーブ。スライダー全盛の現代において、御園の決め球はこの大きな変化のカーブだった。
「ズバーン!」
「ストライクアウトォ!」
三球目は真っ直ぐ。一度カーブを気にしてしまうと、この真っ直ぐには手が出ない。
簡単に斬って捨てられ、藤次は引きつった顔でベンチに戻る。
「…これが埼玉ナンバーワンか…」
三塁からその投球を目の当たりにした日向は、思わず声が出る。
「ガキッ」
次の薫も、当てるには当てたが全く「ボールに触れただけ」である。サードの荒巻がボテボテのゴロを捌き、あっさりとチェンジになる。
御園は涼しい顔で、さっさとベンチに戻っていく。
「やばい…」
健介が言う。ベンチ全体としても、御園の圧倒的投球に、先制の喜びも吹き飛んでいた。
パン!
その時、真司が手を叩いた。
「初回から出てきてくれたんだ。ずっとこのまま140キロ中盤ばかりを投げ続けられるはずないよ、この暑さだし。それに僕らの目も慣れてくる。大丈夫だよ。」
あっけらかんと言って、マウンドへと駆けていく。
「確かにそうか」
「始まったばかりだしな」
フッと雰囲気が軽くなり、二回の表の守備にナインが駆けていく。ベンチの隅で足を組んで座っている加持はふふ、と鼻を鳴らして笑った。
初回の攻防が終わった。
ネルフ学園1-0八潮第一。
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