暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
拾漆 口火
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「J-POP学園歌」だの何だのと散々馬鹿にされてきたこの学園歌を、スタンド全員が肩を組んで誇らしげに歌っていた。


「……」

マウンド上、実にあっさりと先制を許した佐々木は嫌な汗を顔中に浮かばせ、顔を引きつらせている。慌ててマウンドに駆け寄った馬場の言葉にも、力なく頷くばかりだ。
吾妻を初めとした、三年生の守備陣だけでなく、スタンドからこの様子を見ているベンチ外の部員の視線も猛烈に痛い。

この佐々木の心の揺らぎは、馬場の言葉くらいで落ち着くようなものではなかった。
四番打者の剣崎は、力なく投じられる球を情け容赦無くバットで叩き潰す。

「カァーン!」

3-1からの真っ直ぐを叩いた打球は、猛烈なライナーとなって、ライトフェンスにダイレクトで跳ねる。ライトの御園がクッションボールを捕球し、内野までダイレクトの遠投を披露して一塁ランナー日向のホーム生還は防ぐが、一死二、三塁のピンチをまたもや招いた。

「御園ォーー!!」

ベンチから監督が大声で叫ぶ。外野用のグラブをつけた選手がライトへ一目散に飛び出していく。
佐々木は逃げるようにマウンドを降りる。
その顔は真っ青だった。


ーーーーーーーーーーーーー

<八潮第一高校、シートの変更をお知らせ致します。ピッチャーの佐々木君に代わりまして勝田君が入りライト。ライトの御園君がピッチャー…>

マウンドに、182cm80kgの大型左腕が立つ。
ネルフ打線は初回で先発佐々木をノックアウトし、ライトを守っていたエースの御園を引きずり出した。

「御園ォ!締めてけよ!」

投球練習を終え、スコアボードを振り返って大きく伸びをする御園に、ファーストから吾妻が声をかけた。御園は力強く頷き、表情を引き締める。

<5番ライト鈴原君>
「よっしゃぁワイもいくでェー!」

威勢良く声を上げて打席に向かうのは、5番打者の藤次。投手は変わったが、一死二、三塁のチャンス。まだまだ点は欲しい。

(緊急登板だ…肩が仕上がってないうちに畳み掛けたい。このチャンス逃すと御園は打てないかもしれない。頼むぞ藤次!)

日向は三塁ベースから、「打て」のジェスチャーを送る。藤次は大きく頷いた。スタンドではチャンステーマの「5,6,7,8」が流れ始める。


御園がセットポジションから勢い良く右足を上げる。本塁方向への踏み込みはダイナミックで、両手の動きは鳥が羽ばたくような躍動感がある。
そして、その左腕が唸った。

「バシィーーーン!」
「ストライク!」

初球の真っ直ぐを叩こうとして待っていた藤次。しかし、狙い通りの球が来ても手が出せなかった。

「うわ…」

勢いに乗っていたはずの、ネルフ学園ベンチが一気に静かになる。間違いなく今まで見
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