陽龍と陰龍
空
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賛に値する。
力ある子孫よ、汝らの力は万夫不当。獣の畏れとなるだろう。
才ある子孫よ、汝らのその才を存分に生かすがよし。
経験ある子孫よ、汝らの経験は決して無駄にはならんだろう。
最後にこの歴史を語り継ぐ子孫よ、汝らの紡ぎ出す歴史に永遠が約束されんことを…。」
「…」
一同は沈黙した。
アリデシアが言伝を終えたのを見届けていた陽龍ガムロスは陰龍ネヴィアの下へと降り立った。
ネヴィアは口を大きく開け、ガムロスに対してあの怒涛の咆哮を上げた。
「グッ…あの咆哮はそう何度も聞きたくないぜ!」
全員が耳を塞ぐ。重苦しく伝播する咆哮は周囲の天候すら暗くさせた。
その重圧に応えるかのようにガムロスもまた口を大きく開け、咆哮をした。
「な…何だこの咆哮?」
「おかしい…耳を塞がなくてもいいぞ!」
陽龍ガムロスのそれは例えて陽だまり。
陽龍の咆哮は例えてそよ風。
砂漠に響く優しい咆哮は例えて淡い光の輪舞曲
「見ろ!ネヴィアの姿が…!」
エイジの声に全員がネヴィアを凝視すると
陰龍ネヴィアはその全身を覆う甲殻が剥がれ、あれだけ覚醒したかどうかも分からなかった瞳が白く染まり
ロギアを吹っ飛ばした腕は力細く空ろに垂れ下がり
姿勢を保っていたその脚も老人のように頼りなさげ
ついには一枚の板切れのように倒れてしまった。
「対極の龍が咆哮をしただけで…これだけの弱り方…。」
しかし陽龍の方も無傷というワケではなかった。
「お、おい!ガムロスが…!」
ガムロスの甲殻は逆に黒く焦げ、あれだけ神々しかった翼や角もボロボロに砕け散り
ネヴィア同様力なく倒れてしまった。
「ガムロス様!!」
たまりかねたアリデシアが駆け足でガムロスの傍に駆け寄る。ハンターたちもついていった。
アリデシアはガムロスの傍にしゃがみ込み、しゃくりあげながらガムロスと言葉を交わしていた。
数分の後、アリデシアが立ち上がったのを見てハンターたちが問うた。
「ガムロスは最後になんて…?」
「…これでよい、と…」
無理に笑顔になろうとするアリデシアを見て、アルフレッド達は各々涙を伝わせた。
「俺たちは、勝ったんだよな…?」
ダイラスは横たわる陽龍を見ながら一人言った。
「…ダイラス、これは僕の憶測でしかないけど」
アルフレッドが陽龍の腕に手を置き
「ガムロスは最初から、こうやって災厄を終わらせるつもりだったんだと思う。」
「何でそんなことわかッ…いや、そうかもしれないな。」
ダイラスは青く澄み渡った、どこまでも続く空を見る。
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