第一部
第一幕 畜生中学生になる
第一幕 畜生中学生になる
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このゴリラもアホではないだろう、きっとあのおにぎりっぽいものも、実はバナナに色を付けたものだと無理矢理納得しながら、俺の弁当箱を開けた。
弁当は寮のおばちゃんが作ってくれる。これがなかなかに美味しそうだった。
俺は添え付けされたフォークを手に取る。
「箸じゃないのか?」
「………………あれは、家に置いてきた」
本当は、まだ箸をマスターしてないんだが、その事はこのゴリラに死んでも言いたくない。
腕というものだって最近できたんだ。正直あの動きは複雑すぎる。
「……そうか」
そう言ってゴリラは、突然両手を合わせたかと思うと。
「いただきます」
と、言い出した。
「いただき?」
「……お前、いただきますを知らないのか」
「知らん。なんじゃそりゃ」
「………………はあ。だから私は──」
「それはいいから。何だよ、いただきなんちゃらって。それを言わないと食ってはいけないのかよ?」
「少なくとも私は人間の身でありながら『いただきます』も言えんような人間に、米の一粒も食う資格はないと思っている」
「はあ?」
意味がわからん。そんなことを口にすることでどんな資格とやらが手に入るのだというのだ。
「『いただきます』にはなあ。例えば米を作ってくれた人、その人への感謝が込められている。あなたの作ってくれたもので俺は栄養を蓄えることができますって気持ちを『いただきます』の一言に込める。だが、それだけじゃない。米から握り飯にしてくれた私のかみさんにも当然感謝をするし、米自体を作ってくれた人、またこの米自体にも感謝をする」
「……感謝」
「ああ、つまりそういう意味では『いただきます』は『ありがとう』に近い」
……また『ありがとう』かよ。
「……流石に『ありがとう』は知ってるよな?」
「感謝のことだろ?」
「では、感謝とは何だ?」
「…………『ありがとう』」
「………………なるほど」
少し考えるかのような沈黙が流れた。
「確かに、感謝とは何かを説明するのは難しいな。私達は産まれたころから使っているから、何となくわかってはいるものだが、お前のように、そんなものが必要のない……いや、仮に必要があったとしてもその考えに結びつかなかった奴に伝えるのは、この上なく困難なものだと言わざるえない。これをしっかり論理的にやろうとすれば、論文が一つ書けるな」
「何をごちゃごちゃ言ってんだよ」
ゴリラはそんな俺の言葉を無視して言った。
「簡単に言えば、自分が相手からしてもらって嬉しかった時に、私達人間はその気持ちを感謝と言い、それを『ありがとう』という言葉に乗せて相手に伝える。だが、こんな説明で足りるほど浅いものではない」
「…………」
「使う人間によっても異なってくる。まるで考えなしの人間が使うと殆ど無意味な言葉となるし
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