温かい光
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「見ていたぞ!今碁笥に混じっていた石を自分のアゲハマにしただろう!」
目の前の男は立ち上がって、私を指さしそう言った。平安装束を身にまとった人たちが私の周りを囲っている。疑惑の目を私に向け、扇子で口元を隠し、ひそひそと隣同士で話している。目の前には、碁盤。
「私の前でそのような下卑た行為が行われたなど、考えたくもない」
簾の向こうに見える、人影。
「続けるがよい」
事態が私にとっていい方に向かっていないのは分かっている。何が何だか分からないこの中で、息が詰まりそうだった。私を圧する不穏な空気に押しつぶされてしまいそうだ。頭痛がする。声が、出せない。
「ふふふ、では」
目の前の男は碁笥から黒石を取って盤上に力強く打った。自分の中でいろいろなものが消えていく気がする。そして男は言った。
「どうした、佐為殿」
その時、手に温かい感触があった。私の手を力強く、絶対に離さないとでもいうように、でも優しく、包んでくれる誰かがいた。その温かい手の主を辿ってみるけれど、顔が見えない。いや、思い出せない、という表現の方が合っている。むずがゆい気持ちは消えないけれど、手の主がこう言った。
「大丈夫だ佐為。俺はお前がずるなんかしていないことを知ってる。いつものお前のように、打つんだ」
顔は、見えない。でも、私に向かって微笑んでいる気がする。それに、この声、どこかで・・・
夢。そう理解するのに何秒かかかった。毛布は乱れて、身体に汗をいっぱいかいていた。何かが違う。そう思った。そして、何故だろう。無性に、碁を打ちたい。変だ。何千とも言っていいくらい、棋譜が頭に流れ込んでくる。その多くを、どこで見たかは知らない。しかしその一部は・・・・・・。本当に、変だ。
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