資料室で
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雪は朝から降り続いている。12月の後半、棋院の資料室でヒカルは一人秀策の棋譜を見ていた。ヒカルがここに入ってから一時間ほど経っている。時計の針は13時を指していた。そこに、足音が近づいてきた。開かれた扉から顔を出したのは、門脇だった。
「進藤」
その声に、やっとヒカルは二人に気づいた。囲碁のことになると周りが見えなくなってしまう、自分の癖。
「わ、門脇さん」
門脇は部屋に足を踏み入れ、ヒカルが見ているものを覗き込んだ。
「やっぱ秀策か。お前本当に秀策好きだよな」
「まあ。というか門脇さん、どうしたの?」
「いや、和谷が忘年会やるぞとかなんとか言ってるから、進藤にも伝えとこうと思ってな」
「え、いつ?」
「明々後日」
「行くよ。それにしても門脇さん、電話してくれればよかったのに」
門脇は微笑み、部屋を見渡した。
「いや、ちょうど棋院にいたし、お前はここだと聞いてな」
「そっか」
ヒカルがここによく居るというのは有名だった。進藤はどこかと聞かれればすぐに「資料室じゃない?」と答えてしまうくらいに。門脇もここには一度来たことがあったから、迷うことなくここに到着した。
ヒカルは手にしていた棋譜を棚に戻し、門脇のほうを向いた。
「ここから近くにある、椿っていう焼肉屋だとよ」
「了解、でも俺そこ知らないんだけど」
「待ち合わせするから大丈夫だ。詳細はまた後日にな。それより進藤、今時間あるか?」
「あるけど、どうしたの?」
「一局打たないか?」
門脇さんと打つのは久しぶりだ。ヒカルは棚に揃った棋譜の山を一瞬見て微笑んだ。
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