青い春
拾伍 バカになれ
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試合当日には公欠を出すという。教育課程が柔軟なネルフ学園ならではかもしれない。
授業を休んで野球の試合を見て騒げるとあって、人数はすぐに集まった。その理由の一つには、真司と薫という見目麗しいバッテリーの存在もある。
「…もう、学校全体としての、勝負ね」
美里は拳を握った。
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「コラァーッ!何それ!それでTVに写ってもいいのォー!?」
「うるせェーッ!とっとと次打ってこいよクソアマァ!」
小雨が降る中、試合形式のシートノックが続く。かれこれ数時間。今日はこの練習だけを、放課後からずっとやっている。
日向の提案で、夏の大会前に学校で合宿する事になった。追い込み練習という奴である。朝から晩まで厳しい練習をして、チームとして一山越えようというものだった。
朝も晩も学校の合宿所で過ごし、普段の練習に加え体力トレーニングのメニューも追加する。
倍の練習量だ。
その最後の日のメニューがこれだった。
ひたすら続く、ゲームノック。
「あ"っ…」
次の球を打った真理が、打った瞬間バットを放して悶絶した。雨で湿った地面を転げ回る。
打球はボテボテと転がった。
「まっ真希波!」
「ピッチャーゴロ!」
真理を気遣ってマウンドから降りようとした真司に、真理が鋭い声を出す。
ハッとした真司はボテボテと転がった球を拾い、一塁へ送球する。
「真理ちゃん、大丈夫?」
「いったぁぁあ……これでっ…三つ目ェ…」
光が駆け寄って真理の手を見ると、手から血が流れ出している。今日できたマメを今日潰している、という状況らしい。これ以上ノックは打てないだろう。
「やっとこれで終わりだよ」
「もう良い時間だしなぁ」
悶絶している真理を気遣うような余裕も無いくらい、守備についている選手も疲弊していた。
ひたすら同じ事を、ずっと小雨の中やってるのだ。もうユニフォームもスパイクも重い。
終わりだ、もう十分だ-----
そんな空気がグランドに流れ始めていた。
「よーし、じゃあ俺の出番かア」
しかし、そこで立ち上がった男が一人。
「真理ほど上手くはないが、許してくれよッ」
加持が真理が落としたノックバットを拾い、ボールを手に取る。
グランドに、何とも言いようのない空気が広がった。
「ウソだろ……まだ続くのかよ……」
青葉が、誰もが思っていることを言葉にした。
もう限界だろ。雰囲気もダレきってるし、これ以上何もこの練習で得るもんはないだろ。
口々に呟き、恨めしそうな視線を加持に向けていた。
そこで、レフトから大声がした。
「ノーアウト!また最初から始めるぞ!」
他の皆がぎょっとしてレフトを見る。
日向が掠れた声で叫んで
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