第四章
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「他の水着を着てくるわよ」
「他のですか」
「場所はここよ。十時にね」
場所と詳しい時間も言って来た。
「いるわよ」
「来週の十時にここですか」
「そうよ、いるから」
だからだというのだ。
「待ってるわよ」
「そうですか、じゃあ」
「待ってるからね」
「先輩の別の水着ですか」
「見たいのなら来てね」
くすりと笑う様な声での言葉だった、冬らしくない日焼けしている顔にその笑顔は眩しい位だった。夏の様に。
「いいわね」
「わかりました」
僕はその時は素っ気なく答えた、実際どうしようかとは思っていても決断はしなかった。そしてその日は別れて僕はまた泳いだ。
そして次の日だ、学校に行くと。
彼はだ、昨日プールに行った面子を集めて必死の顔で聞いていた。
「おい、それでどうだった?」
「ああ、昨日な」
「昨日のプールな」
「皆楽しんだか?」
最初に問うたのはこのことだった。
「どうだった、それは」
「ああ、楽しんだよ」
「それもかなりな」
「女の子達の水着姿たっぷり見たしな」
「声もかけたしな」
「泳いだよ」
「サウナで汗かいたよ」
本当にこの辺りはそれぞれだった、しかし。
彼女を作ることが目的で行った面々はだ、無念の顔でそれぞれ言った。
「ちょっとな」
「彼女は出来なかったな」
「そっちはな」
「声はかけたんだけれどな」
「くっ、俺もだ」
言いだしっぺの彼も辛い顔で言う。
「残念だけれどな」
「ああ、御前もか」
「御前も駄目だったんだな」
「ああ、三十人には声をかけたよ」
そこまでしたというのだ。
「それこそ小学生から人妻までな」
「おい、どっちもアウトだろ」
「小学生って何だよ」
「人妻にもかよ」
「わかってないな、まだ発育していない青いボディも子供もいてよく熟れた肢体もな」
そのどちらもだとだ、彼は実に腐ったことを言いだした。
「いいんだよ」
「それで声をかけてか」
「それでか」
「挙句一人もだったのか」
「御前も」
「危うく親とか旦那に追いかけられそうになったよ」
当然の結果もあったというのだ。
「けれどな、俺もな」
「というか小学生とか人妻は止めておけよ」
「本当に振られるどころじゃ済まないからな」
「ぶん殴られるどころか警察に突き出されるぞ」
「ヤクザ屋さんの子供や奥さんだったら洒落にならないぞ」
そうした仕事と言えない仕事の人の関係者には声をかけるな、これはもう何があろうと絶対のことである。
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