暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
青い春
拾四 縁の下の
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話



春季大会以降上り調子のネルフ学園野球部は、新設校と喜んで試合するような相手に対してならば毎度毎度圧倒的な試合をするようになっていた。


ーーーーーーーーーーーー

「ほれ、キツネッ!」

ショートの青葉に鋭い打球が飛ぶ。
三遊間のゴロに対して必死にグラブを伸ばすが、その先をボールはすり抜けていった。

「何何ぃ〜?ちょっと緩んでんじゃないのぉ〜ユニフォームが綺麗じゃ〜ん」

追いつけない青葉を野次るノッカー。
左打席から細長いノックバットを振り回して打球を見舞うのは、何と真理である。

「そうら、リスさん!」

今度はサードの敬太へのハーフバウンドの打球。敬太は正面に回って、捕手のショートバウンド捕球のような姿勢で打球を止め、一塁に置かれた丸ネットへと送球する。

三塁と遊撃、二塁と一塁。内野のポジションを二塁ベースで左右に分割して、それぞれ1人ずつノッカーがついて鍛え上げる。

毎日1時間以上続くこのノックを、加持と真理が担当していた。加持はまあ、それなりだが、何より真理のノックが上手い。女だから力は無いはずだが、ノックバットの遠心力を利用するような弧の大きなスイングで、自在に球を打ち分ける。

(地味にこれも大きな戦力だよなあ。もしあのノックを俺か剣崎が打ってたら、俺たちの守備練習の時間が削られるし。)

激しく続く内野ノックを見やり、日向が思う。

「おーしキャプテン行ってみよー!」
「よし、お願いします!」

後輩達に煽られるまま、日向は外野ノックの打球を追う。よく晴れた空に舞い上がった白球を、力いっぱい追いかけた。


ーーーーーーーーーーーー

「おー、いてててて…」

ノックが終わり、フリー打撃へと以降するタイミングで加持と真理はグランドを出て、校内の流し場で並んで手を洗う。
真理の細長い手には、およそ女の子らしくもないマメが無数にできて、皮がめくれている所もある。冷たい水が、その傷に染みて、真理はその顔をしかめる。

「……」

加持の大きな手も、その状態は似たようなモノであった。

「…なぁ、真理」
「はにゃ?」

不意に話しかけた加持に、真理はいつもの間の抜けた調子で返事をする。

「お前、中学まで野球してたって本当か?マネージャーじゃなく、選手として。」
「あ、それは」
「ボーイズの大会の名簿にお前の名前があったぞ。ノックも俺なんかより上手い。あれを"独力で鍛えました"は無理があるだろ。」
「…」

いつもあっけらかんとしている真理が、今回はどうにも決まりが悪そうである。

「…確かに高校野球は女子が試合に出る事は出来ないんだが……いいんだぞ。プレーヤーとして練習に参加しても。」

加持は水を止め、ポケットか
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ