鳳と竜は麒麟を求む
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あ、やっと俺達は家に帰ってきた。そう実感できた今に感謝しながら。
〜伏竜、鳳雛の対峙〜
秋斗さんから贈り物として朱里ちゃんと色違いの団扇を貰った。
彼からの初めての贈り物に私の心は歓喜に溢れた。
夜の闇を映した漆黒の団扇の色はまるで人々に語られる彼の二つ名のようで、彼がいつでも隣にいてくれるようで、あの人を助けるために私が揮えと言っているように感じて。
対して親友の持つ団扇は純白。少しの優越感とも取れる感情が私の心に浮かぶ。醜いとは思う、でもこれはどうしようもないモノ。朱里ちゃんに負けたくないという私自身の心の形だから。
しかし、嬉しそうに話す朱里ちゃんを見て胸がチクリと痛んだ。
その表情はまさに恋をする女の子のモノで、きっと私もあんな顔をしているんだろうと想像出来た。
「――――でね、私はこれから大陸一の軍師になるために頑張ろうと思うんだ」
「……朱里ちゃん、負けないよ。私も大陸一の軍師を目指してるから」
きっぱりと、笑顔を向けてくれる親友に力強く言い切る。あの人の為に、とは言わない。これは私だけの想いだから。全ての平穏な世に暮らす人の為、でもあるけど私の心はあの人を救いたいという想いに傾き始めていた。
きっと、だからこそ私達は王になれない。器とはそういうモノなんだろう。
私の決意を聞いた彼女はきゅっと唇を引き結んで強い光を携えた瞳で私を見た。
「うん、同じ軍だけど、同じ軍だからこそ私達で競い合おうね」
互いに見つめ合う事幾分。私はもう一つ、大切な事を親友に告げる。
「秋斗さんの事は……絶対に負けないから」
言葉に別の意味を込めて伝える。彼の隣に軍師として立って平穏を作り出すのは……私しか嫌だ、というわがままな心を。
「……やっぱりバレてたんだ。うん、負けない。私も……あの人の事が好きだもん」
きっと他の道もある。
二人であの人に想いを伝えたら、優しい彼は私達を二人とも受け入れてくれるかもしれない
でもダメなんだ。それでは意味が無い。例え二人の想いが受け入れられるとしても、彼に一人を選んで貰ってからでないと、優劣をつけないと私達はもう納得しない。
私はもう朱里ちゃんにも、他の誰にも負けたくない。
これは乱世と同じなのかもしれない。
まさしく、彼の言うように誰かが一番にならなければ納得出来ない乱世のよう。
桃香様の理想なら誰もが一人に平等に愛される、という未来も描けるだろう。
しかし元来、権力者は幾人かの伴侶を持つこともあるが、それでも正式な伴侶はたった一人が望ましい。心の問題ではなく、広く事実として全ての人に知られることだろう。
もし、彼の望みと交わりあったとしても、幾人も支える者が増えたとしても、隣に堂々と立てる人はたった一
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