鳳と竜は麒麟を求む
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に捻くれた答えを言わず、現実的に捉える所が朱里らしいと言えた。
煌々と熱く燃える瞳の光は覚悟の大きさを表している。桃香にしたように幾つか問いかけるか。
「……その為に人をたくさん犠牲にする事になるが?」
「もう甘い事は言いません。きっとこれからの乱世ではたくさんの犠牲を強いてしまいます。それでも……どんな事をしてでも桃香様の理想の礎を、優しい世界の土台を創り出す事が私の願いです」
確かにその覚悟は見事だが、一つ踏み外すだけで大変な事になる。
「どんな事をしてでも、ではダメだ。基準線をしっかりと引いておいて、その中から選ぶんだ」
「あ……そうですね。では私はそれを読み切った上で正道を貫くことも、策を献策することも行います」
朱里は俺の言葉を間違えなかった。
桃香の理想の為にどんな事をしてでも、ではいつか人が着いて来なくなる。敵方の邪道を読み切るのにその思考は必要だが、自身がそればかりを行ってはいけないという事。軍師ならば搦め手の類を使っていい相手と正々堂々と打倒すべき相手は見極めなければならない。
「うん、それでいい。じゃあもう一つ。敵の中に善人は入っているか?」
これにちゃんと答えられたなら桃香も変えられる。朱里は哀しそうな表情に変わりゆっくりと口を開いた。
「……入っています。話しても分かって貰えない人とは戦うしかありませんから」
まだ甘いが及第点と言った所だ。これなら後々に期待出来る。その後に従わせる事が出来るのか、と聞くのは簡単だが今はしない。朱里は聡い子だから俺が言うときっと全てに気付く。
でもしっかりと形にするのは桃香が大きな決断を出来た後の方がいい。そうしないと桃香と朱里が内部で敵対する事になる。筆頭軍師と主の対立は俺にとってはまだ望む事じゃない。
桃香がどの程度まで行けそうなのか判断出来ないとこれ以上は進めない。多分、雛里もそれを分かってくれてるから朱里にも話を振って無いんだろう。
もし、これから自身で気付いても、理想との矛盾が大きすぎて簡単には口に出せなくて、巡る思考の中で俺達と同じ答えに行き着いて、まず真っ先に雛里の元に相談を持ちかけるだろう。
「哀しいけどそれが現実だな。ごめん、暗い話題にして」
「いえ、いいんです。考えておかなければいけない事ですし。それに私から話を振ったので……」
また彼女を暗くしてしまった。どうしたモノか。
せめて戦から思考を離して上げたくなって違う話を振る事にした。
「ならもうおしまいとして違う話をしようか。そうだな……徐晃隊の笑い話でもしよう。あれは連合に行く前の話なんだが――――」
歩きながら、朱里に笑い話をすると彼女は楽しそうな笑顔を見せてくれた。
ほっと胸を撫で下ろして俺達は他愛ないやりとりと会話を繰り返しながら帰路に着いた。
あ
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