鳳と竜は麒麟を求む
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「っ! ……こんな感じですか?」
「いや、今です! って掛け声が欲しいな」
それを聞いた朱里は慎ましやかな胸の前に団扇を持って行き、
「今です!」
掛け声と共に先ほどと同じ動きを行った。おのれ孔明、お前がこんなに可愛いはずがない。
「おお、いいな! まさしく伏竜! よっ、大陸一の名軍師!」
褒めちぎると彼女は照れくさそうにしながらも満更ではない様子。
戦術なら雛里がぴか一だが、他は朱里の方が今の所少し上だろうしな。二人で競い合って高め合うのが一番だ。
「ふふ、大陸一ですかぁ」
今の蕩けた顔はただの幼い少女にしか見えない、とはさすがに言わないでおく。
「徐晃将軍。それ買うのかい?」
大きな声が聞こえたのか店から店主が出てきて俺に笑顔で聞いてきた。
値段を見ると安くは無いが払えない事もなかった。
「ああ、買うよ」
「いつもうちのやんちゃ坊主が世話になってるし安くしとくよ」
「雛里ちゃんの分も一緒に買いましょう!」
はっと我に返った朱里が己が親友の分もと言い、そんな彼女の気遣いに心が温かくなった。
「よし、そうしよう。色違いがいいかな?」
「はい!」
「色違いは黒しかないんですが……」
申し訳なさそうな店主から差し出されたのはビームが撃てそうな黒の団扇。
それを見て自分の思考が嫌な方に巡り始める。
司馬懿がこの世界に居なきゃいいけど。もし居たなら大陸でも最強と呼び声の高いあの軍師とこの世界の曹操に組まれたらさすがにまずい。
どれだけの軍師がこの世界にいるかは知らないが、もし誰かしら埋もれているなら引き抜きたいな。
「秋斗さん?」
深く思考に潜っていると朱里が不思議そうに見上げてきた。
「ん? ああすまない、ぼーっとしてた。店主、二つともくれ」
「ええ!? 私も出し――」
「構わないぞ。頑張ってる二人への贈り物ってことにしといてくれ」
「……わかりました。ありがとうございます」
まいどありーっと元気よく応じる店主から商品を受け取り、初めは申し訳なさそうにしていたが贈り物ということに納得したのか早くと急かすようにこちらを見る朱里に渡すと、宝物だというように満面の笑顔で胸に団扇を優しく抱きしめた。
「機嫌直してくれたか?」
「はい! ありがとうございます!」
先程まで拗ねていたがやっと満面の笑顔になってくれた朱里を見てから、また二人で並んで街道を歩きだす。
鼻歌を歌いながら歩く朱里はご機嫌で、最近の疲れた様子も吹き飛んだように見えた。
「秋斗さん」
途切れた鼻歌の後、少しの間をおいて俺に声を掛ける。
「どうした?」
「私は大陸一の、誰も追いつけないような軍師になってたくさん人を救いたいです」
彼女の言葉は先程したなりたいモノの話の答えだろう。
俺のよう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ