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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
再び出会う雪の少女
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能力《コミュニケーション》スキルの中には、参考になりそうなものはなかった。
こんな出来事は初めてのケースなので、上手く頭が働かない。
「ええ、ダメってことはないですが…………それは、楽しいんでしょうか?」
「えっと……楽しくないと、やっちゃいけないの?」
「そ、そういうわけでも……ないですけど……」
なんだ、この子は人と接するのが苦手なのか?
というよりも、人と接したのが初めてだと言わんばかりの反応が返ってくる。
魔術師貴族のお嬢様といっても、外に一切出さないような箱入り娘なんて現実に居るのか…………?
「えと、マスターではなく、一個人として外出してるんですよね?
待ち人に会えなかったのなら、せっかくだから他に出来る楽しいこともあると思うんですが…………」
「そ、そんなこと言われても……私、わかんないもん」
「う、うーん……例えば、こうして誰かとお喋りしてみたり、この大判焼きなど食べ歩いてみたり……て、あ、食べますか?」
包みを一つ取り出して、差し出してみる。
こちらとしては初めて見る大型犬に手を伸ばすような緊張感だが、向こうも向こうでモジモジして困った顔をしている。
どうしていいか分からない、と言った瞳で見つめられる。
「ほら、もぐもぐ────毒なんて入ってませんし、温かくて美味しいですよ」
半分に割って食べて見せ、安全をアピールして再度差し出してみる。
表情を伺いながら、快・不快の感情の機微を見逃さないようにする。
初めての接触なので、嫌な思いはさせないように、無理を強いないように会話を重ねていく。
「あ、あの……もらって、いいの?」
「もちろん」
受け取って貰えたので、一応距離感や彼女の内に踏み込む深さを間違ったということはなさそうだ。
おずおずと口に含み、大判焼きをかじる。
…………ちょっと、その仕草を可愛らしいと思ってしまった。
どうやらマスターとして戦うつもりはないというのは真実のようだ。
そうでなければ、敵である俺からの食物を口にすることはないはずだ。
今のイリヤスフィールは無邪気な少女そのものであり、そこに魔術師としての陰などは微塵も感じられない。
俺が彼女の存在に気づかなかったのは当然だ。
殺意も戦意も何もなく、敵意に属する気配など皆無な少女が自分の後を付いてきていても、何も気にする必要なんてないのだから。
なら俺はフェンサーのマスターとしてバーサーカーのマスターに相対するのではなく、黒守黎慈としてイリヤスフィールに向き合わなければ。
お互いに不出来なコミュニケーションを取りながら。
俺はいつの間にか警戒心など一切持たず、イリヤスフィール
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