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乱世の確率事象改変
藍橙の空を見上げて
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を作れますように。
 そんな祈りを胸にしばらく色んなお話をして、私は洛陽で過ごす最後の夜を満喫した。


 †


 ポトリと一滴、湯飲みに満たした水に眠り薬の雫を垂らす。
 波紋を広げるそれをじっと見つめて、落ち着いた頃に口をつけて一気に飲み干した。
 すると急な眠気が襲ってきて寝台にバタリと倒れ込む。
 ああ、これで夢を見ずに眠れる。
 渦巻く思考も黒く塗りつぶされていき、静かな寝息だけがその場所に響き始める。

 嘘を積み上げ、全てを騙し続けるその男は
 縛られた思考では、自身が重大な間違いを犯している事に気付くことは無かった。




 †







 一面が白の世界にてモニターを見る少女は独り言を呟く。
「二つの内、一つ目の収束点を過ぎましたが……もしかしたらこの事象は二重雑種(ダブルブリッド)ですかね。だとしたらもうすぐ分岐点が来るはずです。しかし三人目の適性者『徐晃』は中々ですね。初めての男ですし、何より『妲己姉様の尻尾』のおかげで他よりも長く外史に取り込まれずに済んでます。今回の虎牢関の時みたいに暴走しなければ存在定着率も安定させられるでしょうから問題ありません。……ふふ、せいぜい踊ってかき回してください」
 立ち上がり、大きく伸びをしてから振り返りパチンと指を鳴らす。
 現れたのは後ろ手に拘束された変態。禿げた頭に三つ編みの髪、筋骨隆々の体躯を覆うべき服は下着と呼ぶには余りにお粗末な物だけ。
「貂蝉、お前達旧管理者のせいでこんな事になってるんですよ? お前達が管理者としての仕事を守らなかった責任が私達に来たんです。
 クソみたいなバグである天の御使いの残滓がこれだけ外史に影響を与えたんです。分かってますか?」
「でも喜媚様、さすがに実数固定されるなんて――」
「思わなかった。そう言いたいんですか? バカですね。外史の分化は確かに大事ですが管理者のように大きな存在が関わったら異常な出来事が起こるに決まってるでしょう?
 まあいいです。この事象が上手く行ったら全てがひっくり返りますし。そろそろ目障りなんで消しますね。お前達のせいでこの男が苦しんでる事を重々理解して、行く先を見続けなさい」
 もう一度指を鳴らすと変態の姿は煙のように消えた。
 彼女はちっと舌打ちをしてモニターの前に座りなおし、男の選択の先を想像しながら口角を吊り上げ、嗤う。

 無限とある確率事象の中、ただ一つの可能性を求めて。

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