黒麒麟の右腕
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を死へと誘う舞。
激しく大きな金属音が響き二人は離れ、その表情を確認すると……なんと笑っていた。
男がそこまで戦えることに俺の心は歓喜に震えた。
戦が途中で止められ、俺と俺の周りの奴らは一斉に膝を着いた。皆気持ちは同じだったんだろうな。
「我らはあなたと共に戦いたい。その武に我らは従いたい」
自然と口からそんな言葉が漏れていた。
御大将は俺たちを見回し、優しく微笑んで俺達の犠牲を減らすために共に強くなろうと言った。
本当に変な人だ。正義の為でなく、戦いに出るのに自分の命を大事にしろと言うなんて。だが何故か凄く惹きつけられた。
一番重要な出来事は初めての賊討伐の事。
ビビってるかと思ったら案外大丈夫そうで、行く道でも普通の様子に見えたが、行き先の村から煙が上がっているのを確認するやすぐに助けに行こうと急き始めた。
しかし逸る心を無理やり押し込んで幼女軍師様から指示を聞いて、口上とは思えないような粗雑な言葉を放って俺達を率いた。
戦場を抜けて行くうち、俺は始めて心の底から恐怖した。圧倒的な死を手渡す狂気に。
普通の奴なら笑って殺す。殺人の狂気に愉悦を見出すはずなのに御大将はただ無表情で淡々と作業を繰り返していた。
斬る度に心が冷えていっている。あの方は壊れかけている。安穏な暮らしをしてきた人にはきつすぎたんだ。優しいあの方の心はもう戻らないかもしれない。
そんな不安が心を満たしたまま戦が終わり、鳳統様が広場にやってきた。
泣きじゃくる少女を抱きしめる御大将の瞳には覚悟の光が宿っていて、俺はその奥に呑み込まれた。その瞳には昏い炎ではなく透き通った想いが宿っていた。
村を出て、賊の拠点を制圧し終わった後、何故か俺達だけ集められた。
「お前らに問いたい。それぞれ守るモノはあるか?」
御大将の言葉に全員が頷く。皆それぞれが何かを守りたいから立ち上がったのだから。
「そうか、命を捨てる覚悟もあるのだろう。ならば俺の想いを聞け」
そう言うと大きな声で語り始めた。
「俺はお前らにこれからも人を殺せと命じる。この腐った世の先に平穏を作るためにお前らを人を殺すクズになれと駆り立てる。その責は全て後の世の平穏にて贖おう。死の淵に立った時、俺を憎んで、怨んでくれ。途中で果ててしまう者もいる、投げ出す者も出るだろう。だが平穏を願う意思は全ての者が持っているはずだ。殺された賊でさえ本来なら幸せに生きていたかったはずだ。ならばその想い、全て俺が連れて行く。乱世に咲く想いの華を集めて平穏の世に供えよう。俺は、平穏に生きたかったという想いを繋ぐために戦う。お前達はどうする! どうしたい!?」
その語りは雷鳴の如く俺の心に響いた。
「俺の心はあなたと共に!」
気付けばそう叫んでいた。皆も口々に声を上げ、
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