黒麒麟の右腕
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そ何も聞かず、ただ自分が出来るであろう事を提案する。
秋斗は言われて目を丸くし、次に遅れて苦笑が漏れ出る。
「クク、いつも世話になるな。だが平原に帰るまでは俺の無理に目を瞑ってくれ。帰ったら……そうだな、隊の皆で何か気晴らしでもしようか」
「あんたはホントに……了解いたしました」
「ありがとう。ではもう一度説明する。今日の―――」
二人には多くの言葉はいらない。語らずともお互いの心は分かっている。
秋斗と副長は微笑みを携えながら互いのすべきことを確認し、それぞれ二手に分かれて眩しい陽ざしの中、徐晃隊に指示を出すために動き出した。
†
兵に指示を出し続け日輪が中天に輝く頃、捕虜として軟禁していたが御大将の侍女として働く事になった二人の少女から昼食を配給され、それを味わいながら己が主との今までを振り返っていた。
最初は気に入らなかった。ひょろいくせにたっぱは俺と同じくらいで、いきなりやってきて、
「えーと、俺は徐晃、徐公明という。これからお前さん達の隊長をやらせて貰うからよろしく」
なんて事を口にした。
しかし御大将の指示する訓練は的確で中々だとは思った。いう事など聞くかという態度の俺達にもビビらずに諭してきた。
だがもっと気合を入れとくべきだったな。あんたの受け持つ隊は荒くたい俺の仲間がほとんどなんだからこっちは屁でもねえぜ。
そんな事を考えながら適当に流し、訓練が終わると落ち込んでいた御大将に張飛様が近づいていった。
関羽様が続いて近づき……なんと勝負を挑みはじめた。しかしその時の御大将はビビッて逃げ腰。確かに関羽様と勝負などできる男はいるはずもなかったが。
ビビっている御大将に趙雲様と張飛様が焚き付け、遂にキレた御大将は関羽様に対して簡単に倒せるような口ぶりで逆に挑発し返した。
身の程を知れよバカが。その時は周りの誰もがそう思っていた事だろう。
戦いが始まり……俺達は驚愕する。二人は見るモノ全てを魅了するように舞っていた。
関羽様は力を抜いているのは見てとれたが御大将はそれに余裕で合わせ、さらには涼しい顔で互いに力を確かめ合っていた。
「おい」
いきなりの声で舞は途切れ
「お前、本気だせよ。じゃなきゃ負けるぞ」
御大将から放たれた言葉でその場の雰囲気が一瞬で重厚なモノに変わった。
ゆっくりと剣を上げ水平に構え、離れて見ている自分でさえ寒気が抑えられなかった。そこには人を殺さんとする者が放つ気が収束し、少しでも動けば自分が殺されるのではないかと錯覚するほど。
関羽様の身体からも同等の気が放たれた途端に先に移動し突きを放っていた。関羽様はそれを紙一重で避け試合では使うモノではない速さの斬り上げを放つ。
長く続いたがそれはもはや殺し合いだった。美しく、力強く、相手
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