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裂けたチケット
第一章
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                       裂けたチケット
 和歌山県のとある駅にはこんな噂がある、その噂はというと。
「裂けたチケットが切符売り場に置いてあって?」
「それを手に取って駅に入れば青い列車が来てそれに乗れば別の世界に行ける」
「そこは面白い世界っていう」
「そんな話か」
「そんなのがあるんだ」 
 ただその別の世界が具体的にどういう世界かは噂では語られていなかった。このことが噂をさらに神秘的なものにさせていた。
 その噂についてだ、鉄道マニアである織部一三が首を傾げさせて友人の川崎敬司にこう言った。織部はやや太っていて頭をパンクにさせて眼鏡をしている。川崎は痩せて髪を伸ばし金髪にしている。ちょっと見れば二人共所謂鉄ヲタではないがそれは二人が実はそうした音楽のマニアでもあるからだ。マニアの興味の対象は一つとは限らない。
 その織部がだ、川崎に言うのだった。
「ひょっとしたらな」
「その駅の裂けたチケットを持って青い電車に乗ればか」
「ああ、地獄に行ったりしてな」
 織部は笑って川崎に言った。
「どういった世界かはわからないんだろ」
「まあそのことも最近言われてるけれどな」
「それでもだよな」
「そうだよな」
 こう話すのだった。
「どうもな」
「どの世界に行くか、か」
 それがわからなかった。それでだった。
 二人で首を傾げさせる、織部はここで川崎にこうも言った。
「鬼が出るか蛇が出るかでな」
「どの世界に行くか、か」
「試してみたくないか?」
 冒険に行く感じでだ、彼は川崎に笑顔で言った。
「それをな」
「地獄に行ってもいいのか?」
「その時はその時でな」
「死んでもいいのかよ」
「そもそもチケットが本当にあるかどうかわからないだろ」
「まあそれはな」
 川崎もこのことについて言った、その行く先について。
「誰も行ったって話がないからな」
「行くか、じゃあな」
「ものは試しか」
「ああ、確かめてみような」
 織部は川崎に笑顔で申し出てそしてだった。
 二人はその和歌山のある駅に向かった、その駅に行くこと自体は簡単だった。電車に乗って行くだけで鉄道マニアとしてはどうでもないことだ。
 そして切符売り場に行った、だが。 
 そこには何もなかった、川崎は織部に笑ってこう言った。
「なかったな」
「ああ、じゃあこの話はな」
「ただの噂だったみたいだな」
「そうみたいだな、よくある話か」
「噂は噂だよ」
 川崎は笑って言った、その痩せた顔で。
「所詮な」
「そういうことか、ただな」
「ただ? 何だよ」
「いや、あれな」
 ここでだ、織部は右手を指差した。そこは駅への出口だった。
 一瞬見ただけだった、だがそこに見えたのは。
 随分と大きな、そし
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